まるで絵本のようなカラフルで可愛らしいようなちょっと不気味なようななかなか不思議な世界が繰り広げられるのだけれども、しっかり現実でシュールっていう。
よもやこんな悲しいというか沈んだ気持ちに着地させられるとは前半戦では夢にも思わなかったよ。
前半はとにかく幸せで幸せで楽しくてしょうがない感じ。
主人公のコリンはお金持ちで働く必要がない。
ニコラはコリンの料理人で弁護士。
コリンのために料理を作ったり身の回りを世話している時は敬語で話、友人として一緒に遊びにいく時はタメ口に戻る。
コリンの友人のシックは本マニア。
毎日を楽しく過ごしていたコリンは恋をしたことがないことだけが不満だった。
しかしとあるパーティでクロエと出会い恋に落ちる。
デートを繰り返し、ついに結婚する二人。
幸せ絶頂だったのがクロエの肺に花が咲いたことにより全ての歯車が狂い出す。
クロエと結婚したあたりでコリンはお金が随分と減っていることに気がつくのだけれども、クロエが命に関わる病にかかってしまったため、そこから生活が困窮していく。
それまでの極彩色のファンタジーな世界観が一点、どんよりと冷たいものに文字通り変わっていく。
家はどんどんと狭くなり、それに合わせてなぜかニコラも急激に老けていく。
お金がなくなるとたちまちこの世は地獄ということで。
これまで働いたことのないコリンにとって職探しは困難の極み。
肉体労働に従事するもそれもうまくいかない。
世間からも冷たく扱われ、なんだろうか...それで陰々滅々と終わっていく。
いや確かにまぁそうなのかもしれないんだけれども、えー。
前半はなんというか、すごく楽しいんだけれどもニコラを演じているのがオマール・シーなので、このニコラの立ち位置の不可思議さが、もしやこれってWhite PlivilegeとかWhite WashとかIgnoranceでは...と思ったものの、あまりにも見た目がファンタジーというかファンシーすぎて、まぁこれはこれで....と自分を宥めたら、まさかの大転落。
世界はちっともカラフルでもファンシーでもなんでもなく、希望なんか全然見えない。
薄暗いじめっとした光のささないものに一転していったので、あまりのことのぼー然。
お金がないとどうにも生きていけないというこの凄まじい落としぶりに呆然。
とはいえ、1番シュールに感じたのはシックかな。
凄まじい本マニアなキャラで全財産をとある作家のヴィンテージものにつぎ込んでいって、他のことに全く気が回らない。
やがて身を滅ぼしていくその姿は”アディクト”の怖さをものの見事に表していて、うーん、まるで自分じゃんとちょっと怖くなった。
オマール・シー出演作品攻略の一環で見た映画だけれども、すごく面白かったとは思う。
見終わった時にはひどくどんよりとした気持ちになっているけれども。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅: 61%