かつてトゥパック・シュラクの殺害にノートリアス・B.I.Gが絡んでいたという説を唱えていたジャーナリスト、ジャック・ジャクソンはノートリアス・B.I.G、本名クリストファー・ウォレス殺害事件の真相を突き止めようと、LAPDの刑事ラッセル・プールの元に取材に行く。事件から18年経過していたがラッセル・プールもまた事件を調べ続けていた。
行きすぎた東西ヒップホップ抗争が招いた悲劇という文脈でよく語られる二人の死。 「LAbyrinth」という本で語られた二人の死にはLAPDの関与があったのではないかという説をベースに、刑事のラッセル(ジョニー・デップ)が記者のジャック(フォレスト・ウィテカー)に事件について語っていくことで映画は進む。
そもそもHip-Hopについて最近習い知ったばかりなので、才能ある若いHip-Hopアーティストが二人もこのような恐ろしい形で人生を絶たれてしまったことに関して当時の人々が受けた衝撃というのも推し量ることしかできない。
ただこの事件のせいでなんとなくラップといえばギャングスタラップというイメージが固定化してしまった印象がある。
この映画はもちろん事件の真相を探ることがメインなのだけれども、なんとなくデンゼル先生の「The Little Things」と似たものも感じてしまって。
一人の刑事が正義を遂行しようとする時にぶつかる壁。曖昧で何かつかみかけたと思ってもすぐに有耶無耶になって霧散してしまう。
それでも被害者に寄り添い、事件の真相を地道にコツコツと調べていく。
この事件のせいで妻も息子も離れていき、出世の道も絶たれる。
たった一つの事件に人生を完全に狂わされ、取り憑かれてしまう。
刑事に昇進した時には夢にも思わなかったであろう人生。
正義を貫くことの過酷さ。
その正義とは決して大上段に構えたものではなく、ただ真犯人を逮捕することそこに集約される。
うまく言えないのだけれども、とんでもなく地味で孤独で過酷なこの刑事という仕事に真摯に取り組んでいる人たちも確実にいるということで、「The Little Things」でデンゼル・ワシントンが演じていた主人公と共通するものをジョニー・デップが演じるプールにも感じた。
ジャックが最後に自分の言葉を激しく後悔する場面があって、もうなんかそこでめちゃくちゃ泣けてしまった。
この悔しいような歯痒いような、申し訳なさと腹立たしさがないまぜになったなんともやりきれない感情にしばらく呆然とするしかない感じで。
フォレスト・ウィテカーとジョニー・デップが醸し出す決して表面化することのない二人の間のケミストリーのようなものもすごくよかったと思う。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅:50%