So Be It

見た映画の感想。時にネタバレを含んでいますのでご注意ください。

ネバー・ダイ・アローン (Never Die Alone)

人でなしが人でなしのままに生き、そして人でなしとして死んでいく話。

 

 

ここまで潔く”人でなし”が主人公という映画を私は初めて見た気がいたします。

いやもう本当に"人でなし"なんですよ、このキング・デイヴィッドは。

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元々組織の麻薬の売人で、大きな取引を任されたのでその薬を持ち逃げして、新天地であるLAで独自に売り捌く。 その方法がまずルートを広げられそうな相手を物色する。

キングが選んだのは白人女性のジャネット。

なぜ彼女が販売ルートを広げるのに最適な相手なのかというと、彼女は女優であり、小さな役でドラマに出ている。デイヴィッドはまず彼女を薬物中毒にして、それから共演者に紹介させる。

薬物中毒にする手際がまたえげつない。

コカインといいつつヘロインを渡すのだけれども、ただ渡すだけではなく化粧品や飲み物食べ物にさりげなく少量混ぜ込むという手口。

デイヴィッドによるとジャネットはドラッグについて無知すぎ他ので思いどおりに動かすのは簡単だったようだ。

 

コカインよりもヘロインの方がタチが悪いらしい。

中毒性がコカインよりもエグいということなのかな。

薬物は恐ろしい。

その効用を知り尽くしている売人はもっと恐ろしい。

生かすも殺すも匙加減一つな感じが。

そこにもちろん良心の咎めもなく、自分の目的に必要がなくなれば捨てる。

次にデイビッドが付き合った大学生のエラも薬物中毒にされて捨てられる。

彼女はデイビッドの子供を産んでいる。彼女が生活のためのお金を要求すると薬を置いていく。

結局彼女は幼い息子を残してヘロインの過剰摂取で死んでしまう。

 

いいとか悪いとかもうそういう判断をする気もなくすというか。

もちろんデイビッドがそうなるにはまたその生い立ちに原因を見つけることもできるのかもしれないがそこは一切語られない。

ヘロインを持ち逃げして、お金を稼いで目標額を達成して彼は地元に戻ってくる。

薬を盗んだお金を組織に利息つきで返しにくるのだ。

そのため因果応報な結末をデイビッドは迎えることになる。

 

デイビッドが棺桶に入っているところからスタートするので、彼が死ぬことは最初からわかっている。

彼は自伝を出版する予定だったのかカセットに薬を持ち逃げしてから以降のことを吹き込んでいて、それをデイビッドの死後にジャーナリスト志望の白人の青年が聞く形で映画は進行していく。

この青年はたまたまデイビッドが襲撃される現場にいあわせただけの関係だ。

撃たれて重症なデイビッドを病院に運び、デイビッドは死んでしまうが病院側からデイビッドが全てを彼に譲ると遺言を残したということで、青年はデイビッドの埋葬を引き受ける代わりにデイビッドの車を受け取る。

そこにテープとデイビッドが稼いだ目標額のお金が入っているわけだが、カセットを聞いて事情を知った青年は最終的にデイビッドの息子に車とお金を渡す。

 

死後に関してはデイビッドは全てを運任せにした。

自分を病院に運んだ白人に自分の全財産全てを譲る。

「ホワイトボーイのお前に助けられるとは皮肉だ」と病院に向かう車の中でデイビッドは漏らしている。

 

「この結果がカルマだとして、どうして俺たちは負の連鎖しか起こせないのか、その逆の連鎖は起こせないのか」というデイビッドの独白から、デイビッドの息子にはもしかしたら選択肢が生まれたのかもしれない。

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しかし、彼のカルマも相当深い。

 

お金を横領しなかったホワイトボーイに感心しつつ。

部屋にWU-TANG CLANのポスターが貼られていたりしたので、彼らの痛みを知るものという位置付けなのか。

 

因果応報ということでいうなら、因果応報が報われる時がくるまで足掻き続けるしかない。

負の連鎖を断ち切ることができるかできないかは結局自分の決断にかかってくる。

自分の代は無理でもせめて次の代には。

 

ここだけ切り取ると随分と虫のいい話に聞こえてしまうが、レーガン政権が行った軍事費を得るために行った社会福祉関連の予算を大幅削減や1979年〜1989年コントラ戦争の資金調達のために行われたことなどと合わせて考えると、そう簡単には割り切れなくなってくる。

このあたりはNetflixのドキュメンタリー「Crack: Cocaine, Corruption, & Conspiracy」、「Grass is Greener」が詳しい。

 Grandmaster Flash、 melle Melが1983年に「White lines (Don't Do It)」という曲をリリース。コカインをやると人生が破壊されるから絶対にやるなと警告している。

 

他にもブラックコミュニティに警告を促す歌がHip-Hopアーティストから多くリリースされた。

当時、Hip-Hopはブラックコミュニティで知識を広め共有する手段として大きな役割を果たしていた。

Hip-Hopのリリックで語られる学びや教訓を胸に刻みこみ、負の連鎖から抜け出せるよう、また負の連鎖にはまりこまないように大勢の人たちがHip-Hopを心の拠り所に逆境を生き延びてきた。

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️/5

🍅: 26%

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