So Be It

見た映画やドラマでFilmarksにない作品の感想と覚書。時にネタバレを含んでいますのでご注意ください。

16歳、戦火の恋 (Where Hands Touch)

 ナチスの政権下で、アフロ・ジャーマンの人たちはどうしていたんだろうと、ふとそんなことが気になりました。

16歳、戦火の恋 (字幕版)

16歳、戦火の恋 (字幕版)

  • ジョージ・マッケイ 
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  アメリカの黒人の人たちの歴史や南アフリカのアパルトヘイトにまつわる歴史はこの一年でカケラをかじる程度ではあるものの映画やドラマ、本を通して知ることができましたが、イギリス、フランスのこととかはあまり知らないなぁと。

 イギリスは多少はドラマなどで見てはいるもののまだまだはっきりと認識できているとは言い難い状況です。

 フランスもオマール・シーの映画やドラマ、インタビューを最近チェックするようになって、アメリカと同じようなことがここでも起こっているんだなぁとぼんやりと認識するようになったものの、フランス語などちんぷんかんぷんもいいところなので英語や日本語で検索するようにはなかなか。

  白人至上主義とナチがよく結びついて語られたりするので、そういえばどうだったんだろうなぁと。

 内容が難しそうだし、とりあえず日本語のページで何か見つけられないかと検索したらこの映画がヒットいたしました。

  いや、邦題があまりにもあまりで、ちょっと躊躇ったんですが。

  でも内容はまさに私が知りたいと思うところの内容だったので視聴しました。

 

 映画自体はとても見やすくて、一端を垣間見るにはちょうどいい作品だったと思います。

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 ラインラントで出会ったドイツ人の白人女性とフランスの兵士でセネガル人の黒人が恋に落ち、その間に生まれたレイナという少女がこの映画の主人公。

彼女はドイツ人として母親と弟ともに暮らしています。

 白人ではないドイツ人の女の子は子供が生まれる年齢になると強制的に不妊手術をされたということです。手術をしたという証明書を所持していなければ強制所送りに。

 お母さんが偽装の証明書を手にれるなどの手を尽くしてレイナは不妊手術は免れますが、お母さんがレイナを庇ったことで強制収容所送りとなり、レイナもすぐに収容所送りになってしまいます。

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 かろうじてまだ家族と平和に暮らせていた時に、レイナはナチスの青少年団に所属するルッツと恋に落ちることになるわけですが。

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 実話というわけではないので、かなり優しく、”残酷”さや”凄惨”さは「大体想像がつくでしょう」的にオブラートに包まれています。

 包まれているからといって”残酷”でも”凄惨”でもないわけではなく。

 でも、実際はこの程度では済まされなかっただろうなと思ってしまうぐらいには”優しく”描かれていたという印象。

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 ナチ政権下のドイツでドイツ人の黒人の人たちはどういう扱いを受けていたのかということに思いを馳せるきっかけとなること、それがこの映画の最大の目的だったのではないかと。 

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 監督はガーナ系イギリス人のアマ・アサンテ。

 彼女のインタビューによるとヨーロッパで1番古い黒人のコミュニティのいくつかはウェールズにあるそうだ。

 このことを知った時にそういえば、アメリカの黒人の歴史はよく知っているけれどもヨーロッパやイギリスでの黒人の歴史については知らないと思い、ヨーロッパの黒人の歴史を調べはじめるようになったとか。

 そして、その時にしょっちゅう目にしたのが”Rhineland bastards”という言葉で、そこからナチス政権下のドイツの黒人の人たちについてより深く調べるようになり、そこからこの映画の着想を得たそうだ。

 それからジョン・シングルトン監督の「‘Boyz N the Hood」にとてもインスパイアを受けたそうで、何度もみてシーンごとに分析したりしたそうだ。

  ジョン・シングルトン監督のおかげで黒人でも映画監督になれるんだと勇気をもらえたとか。LAのレストランで偶然見かけたことがあり、声をかけたかったけれども勇気が出なくて話しかけなかったことを今ではとても後悔しているそうだ。

 

 ところで現在のドイツでの黒人の人たちのポジションはどのような感じなのだろう? そんなことを思って検索をかけたら興味深いドキュメンタリーをYouTubeで見つけた。

 ドイツ人だというと驚かれるというところからはじまって、まるで存在していないかのような扱いをされているという現状。

 興味深かったのはドイツの植民地となりカメルーンからドイツに移民するとき、今でいう人種差別という概念はなかったとか。というわけで白人と黒人のカップルも普通に誕生している。ナチス時代は差別されるのに黄色い星をつける必要がなかったというところで、ユダヤ人やロマの人たちが星マークの着用を義務付けられたというのは、見た目ではわからないから印をつける必要があったということかぁと。

 それでもアメリカの映画などだとヨーロッパの方がはるかに肌の色による差別はない感じで描かれて、アメリカに戻った途端に扱いが変わってというパターンを多く見かけるのだけれども、でもヨーロッパ各国にも歴然と人種の壁は存在していて。

 でも人種差別の概念がなかったという時期も確実に存在していて。

 奴隷として労働力搾取されていた時代もあったけれども、そういう概念がなくなった時期もあったということなのか、それともそれを話していた人が俳優一家だったのでショウビズの世界ではその概念がなかったということなのか。

 あと、白人と黒人の夫婦の間に生まれた子供たちも住む地域によってずいぶん異なる体験をすることになるようだ。褐色の肌で生まれると、白い肌で生まれると思ったと親から捨てられたり、白人夫妻の養子となって、学校側が肌の色で差別的な処置を行うと全力で戦ってくれたりと。髪の毛がまっすぐだと白人扱いで、アフロだと黒人扱いとか。

 あとサッカー選手のゲーラルド・アサモアも登場した。彼はガーナ出身で12歳の時にドイツにいる両親の元で暮らすようになる。まずガーナの代表選手として選ばれた時は簡単だったそうだ。ところが2001年にドイツ代表として選ばれたときは、黒人のサッカー選手で初めてドイツ代表に選ばれたのだけれどフィールドに出るたびにブーイングを受け、それが嫌になって代表選手を辞めたとか。

 

 まだ自分が何か思うところまでは全然知識が足りていないので。

 今回はこのあたりで。

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅: 43%

 

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