ぼろ泣き。
でも先に、邦題に物申したい。
邦題というか後ろのフレーズ「君がいて、僕がいる」ってすごく謎なんですが。
2人の友情物語とかそんなのかとすっかり誤解していたじゃないか。
いろいろと難しい映画だった。
フランスの芸能史というか、そもそも”道化師”というものの役割や位置付けみたいなのを知らないので、彼らがそれまでの”道化師”という概念をどうひっくり返し、衝撃を与えたのかがわからなかったので......というか、そもそも”道化師”とはなんだろうというところから私の場合始めないとちょっと難しかった。
身体表現能力というか技術に長けていないとできない動きで”滑稽”を生み出し、人々を笑わせる専門家という解釈でいいんだろうか。
とりあえずあらすじはこんな感じ。
サーカスで食人族のパフォーマンスをすることで職を得ていた黒人のラファエル・パディラ。ある時、かつて売れっ子で今は世間から忘れられかけている白人の道化師フティットがコンビを組もうとパディラを誘う。
二人のコンビ芸が大当たりし、パリの大手見世物小屋の座長からスカウトされる。
パリに進出した二人はさらに大成功を収め、大スターとなり、収入も増えて暮らしぶりも良くなる。
しかし、ある時パディラは身分証を持たないため警察に逮捕されてしまい、暴行を受ける。
パディラが身分証を持っていないのは、彼は子供の時に売られた先であるスペインの農場での処遇に耐えかね逃げ出したからだ。
これだよ身分証だよ。「サンバ」でも身分証に苦しめられていたんだけれどここでもまた「身分証」だよ。
「身分証」を所持していないので法執行機関に見つかると逮捕される。
この罪って不法入国になるのかな??
それともワーキングビザを持ってないのに働いたからイリーガルとされて逮捕されたのかな?
しかしパディラはスペインの農場に所持されていた奴隷であり持ち主の元から逃げ出してきているわけでそもそも身分証は存在しない。
こういう場合どうせーっちゅーねんっていう話で。
持ち主の元から逃げる方が悪いとでも言う気ですか?
ご冗談でしょ。
パディラが芸人として人気を博した記録が散見されるのは19世紀末から20世紀の初頭にかけて。
で、フランスで奴隷制度廃止の政令が制定されたのが1848年。
今読んでいるサイトにはこの時奴隷主には賠償金が支払われたと書いてあるんですが、奴隷にされた人たちに対するケアは全くなかったということ???
というか、誘拐してきて見知らぬ土地に連れてきてさんざんコキ使っといて、あとは自力でどうにかしろとポーンと放り出したみたいな感じ???
賠償金とか帰国の手配とか身分証発行するとか全然しなかったわけ???
でも奴隷主には賠償金が支払われたっていうのは...???
だって、1820年には奴隷貿易は禁止されているわけだから既にとっくにイリーガルなのに??
あ、国内にいる奴隷の売買は禁止されなかったってことなの???
だから賠償??
いやでもええっと??
普通、誘拐されて奴隷にされた人たちのケアを優先してするもんじゃないのか?
頭が大混乱を起こしてしまったので、そもそもスペインはどうだったんだろうと検索かけたら、なんとまぁ、そもそも黒人を奴隷として商品化したのはポルトガルだったんですねぇ。。。(ブラック・サムライ弥助を思い出してしまいましたがな...)
金よりも奴隷の方が利益が大きいって...💧
最初は先住民を奴隷として使っていたのが酷使しすぎて数が足りなくなり、足りない分を白人年季奉公人でカバー。で、黒人奴隷が大量投入される...。
結局のところ怖いのは人種差別というよりも誘拐、人身売買が合法だったってことじゃなかろうか。
誘拐されようが売り飛ばされようがどこに訴え出て助けてもらうこともできないならもう逃げるしかないじゃん、みたいな。
でも合法だったら逃げた方が悪いってことになるのか???
えー???
年季奉公だと契約上とかなんとかってその理屈が法的には通ってしまいそうだけれど所持品とされている奴隷自身だったら逃げたところで持ち主側の管理責任ということで法的には罪も何も発生しないか...。
管理責任と言えば聞こえはいいけれども結局持ち主は生殺与奪したい放題ってことで...。
恐ろしいな。
こういうことが合法って恐ろしすぎるな。
って、映画から随分と遠ざかってしまったような、でもやっぱり遠ざかっていないような。
パディラはスペインの農場から逃げ出してきたわけだから、スペインの奴隷廃止制度はいつだったんだろうと調べてみたら、これまたびっくりな。
何やら戦争に負けたスペインは教皇のお裁きでアフリカには手を出せなくなったとか。
自分でアフリカに行き、黒人を誘拐してくることができなくなったので外注することにしたと。スペイン王室から外注された外国の業者はスペイン王室のお墨付きで黒人を誘拐して売り飛ばすー.....(ざっくりしすぎた説明ですみません)
なんだか複雑すぎる。
この複雑すぎる状況でパディラがスペインからフランスに逃げたとしてフランスの身分証をゲットするなんて至難の技としか。
だってだって言語すらも違うじゃんかよ!!
なんの書類を揃えてどこの役所のどの窓口に提出すればいいのかもよくわかんない!
”身分証ないよ問題”はパディラが逮捕されてからパリの座長が解決というか身分証を手に入れてくれてもう身分証の心配はないよということになったけれど、どうにかできるんだったらもっと早くにどうにかしてあげてよ!
座長は知らなかったと言い訳できるけどフティットはパディラが身分証持ってないこと知ってたわけなんだからさ💢
前の興行主がチクッたから逮捕されるはめになったんだとフティットは説明していたけれど、そういう問題でもないような気がするんですが...。
まぁ座長に身元保証人になってあげて欲しい的な説得をフティットが苦労して行ったのかもしれないけれども...でもなぁ...。
パディラはギャンブルとアヘンに溺れちゃったりして、ギャンブルで借金かさんじゃって取り立て屋にボコ殴りされる場面があるんだけれども、この辺りは見ているこっちも「これは人種差別じゃなくてギャンブルで負けたお金返さなかったら白人だろうがボコ殴りされるんだよー」と訳のわからない悲鳴をあげることに。
取り立て屋に対しても「体が商売なのに商売道具になる大事な体を痛めつけたらあんたらお金回収できへんぜよ!取り立て屋としてそれおかしいんちゃう!」とこれまた謎な怒り方をしている自分がいたりして😓
映画の中で出てきた植民地博覧会っていうのがこれまたえげつなくて...。
万国博覧会のもとがこれなんだろうか、これなんだろうなぁ...って検索したら博覧会事情がこれまた複雑怪奇すぎてとりあえず保留だ!
なんというかフランスではラファエル・パディラの存在は完全に忘れ去られていたそうなのですが...。
上流社会から受け入れられているようで受け入れられていない辛さよりも、同じ黒人の人たちから裏切り者として憎まれる方が辛そうで。
あとパディラの彼女の隣人が一言侮蔑的言葉を投げかけるためだけに顔をのぞかせたところも「なんやねん!」って感じでした。
あんたの方がよっぽど怖いわっ!みたいな。
映画にも出てきた実際のフティットとパディラのパフォーマンスを記録した映像
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅: 100%