HBO MAXにて視聴。
「ブロードチャーチ」というイギリスのドラマにアレック・ハーディという刑事が出てくる。 彼はとある殺人事件の捜査で犯人を捕まえるために必死で捜査をし、あまりにも根を詰めたため、ついに心臓発作を起こしてしまいドクターストップがかかってしまう。 それでも彼は執拗に犯人を追い続ける。
このドラマを初めてみた時、殺人課の刑事が1つの殺人事件にここまでのめりこんで健康を損なって私生活も立ち行かないというようなことになっていたら実際いくつ命があっても足りないのではなかろうかと思ったことがある。
「The little Things」を見ながら思い出したのがこのアレック・ハーディのことだ。 ああこれはもう一つの”アレック・ハーディ”の物語だなと。 刑事もので殺人事件を捜査するとなると期待するのは事件の解決だけれども、これはそういう映画じゃないんだなと。
変質的な殺人者が出てきたりするものの、なんというか優しさの染み入る映画だったという気がします。 受け止め方によっては全てがもやもやしたままで何の解決もしてないんじゃないかとか、身内と身内を庇い合うようなこの体質こそが冤罪や汚職の原因なんじゃないかとか、そういうこともまた然りではあるかもしれないんですが、そこで割り切れるような簡単な話でもなく。
なんというか彼らは誰よりも真摯に被害者とその家族のことを思って犯人を捕まえようと身を粉にしていたのだからとても責められないという思いと、だからと言って、殺されてしまったあの被害者の人や、物的証拠もなく殺人犯にされ死人に口無しにされてしまった彼の立場からすればとんでもないことで。
どちらの立場に立つかで応援したい側の真実で物事を見たがってしまう自分というのにも気が付かされる感じで頭の片隅で「よかったよかった」って思っちゃダメなんじゃない?なんて声がしながらも、それでも。
デンゼル先生とラミ・マレックの間に緩やかに築き上げられていく絆というか世代を超えて分かり合えるような感じも心地よく。
しょぼくれたリタイアなおっちゃんから不意に昔の面影を思わせるシャープさというか、これこそが彼の本分で彼はずーっとこうして生きたという鋭さ、そして犯人を追い続けた過酷な歳月によってどこか壊れたココロ。 そういうその人自身についた人生の痕跡みたいなものを醸し出すデンゼル・マジックとでも言えばいいのか。
徹底した取材に基づき、それにつながる自分の中にある何かを表出させることでリアルな役柄を作るというのがデンゼル先生の役作りの妙義なのだとしたら、今回は若者に負けるかという思いと、頼もしいという思いと、かつて自分が落ち込んだ道で苦しむ若者を労りたいような愛しむような。 自分はもう去りゆく人間なのだという寂しさと同時に、そこまできたから得られる解放感等々がデンゼル先生の演じた”デューク”から香りたっていて、ああデンゼル・ワシントンだーって。
何かの要素が悪目立ちすることなくいい味加減にブレンドされたコーヒーみたいな映画だったかな。
アナログ感とかLAの田舎感とか。人情面も含めてどことなくノスタルジック。
多分だけど。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅: 47%