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見た映画の感想。時にネタバレを含んでいますのでご注意ください。

Giving Voice: 内なる声が語ること(Giving Voice)

 チャドウィック・ボーズマンの最後の映画作品となる「マ・レイニーのブラックボトム(Ma Rainey's Black Bottom)」がいよいよ今週の金曜日からNetflixで配信されることになっている。

 

 ブルースの母と呼ばれるマー・レイニーという女性歌手についての物語でオーガスト・ウィルソンという劇作家の舞台作品を映像化したもので、プロデューサーはデンゼル・ワシントンだ。

 

  劇作家のオーガスト・ウィルソンは2005年10月2日に癌で亡くなっている。

 彼が残した全10作品。様々な時代の様々な立場の黒人の思いをきめ細やかに綴っており、彼の作品の中には必ず誰か共感できる登場人物が存在するといわれている。

 

  デンゼル・ワシントンの「フェンス」を見た時にオーガスト・ウィルソンについて少し調べ、彼の作品はいずれもアメリカで生きる黒人の気持ちにとても寄り添った作風であるらしいことを知ったが、先日Netflixで配信が始まった「Giving Voive」を見たことで、より一層オーガスト・ウィルソンの作品がどれほど彼らの心に響くのかということがわかった気がする。

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「Giving Voice」は2018年に開催された第10回オーガスト・ウィルソンの劇作品のモノローグ・コンテストの出演者達の様子を追ったドキュメンタリーで、コンテストの様子と並行して、オーガスト・ウィルソンの作品がブロードウェイにとって、そしてアメリカの黒人にとってどのようなものであったかを彼の作品を演じた俳優、デンゼル・ワシントン、ヴィオラ・デイヴィス、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソンや関係者が語っていく構成になっている。コンテストの挑戦者たちもそれぞれにドラマがあって、ついつい感情移入してしまい、誰が選ばれるのかなかなかハラハラさせられた。

 

話は 「マ・レイニーのブラックボトム(Ma Rainey's Black Bottom)」 に戻るが、先週の日曜日にCBSで放送されたデンゼル・ワシントンのインタビュー を見た。

 チャドウィック・ボーズマンの病気のことをデンゼル・ワシントンも全く知らなかったそうだ。撮影現場でチャドウィック・ボーズマンと恋人のテイラー・シモーヌ・レッドワードの仲睦まじい様子を見るのが大好きだったデンゼル・ワシントンはチャドウィック・ボーズマンに「絶対に彼女に結婚指輪を送るべきだ」とせっついたとか。

「でもその時は病気について全く知らなかったから」と。

 

 せ、切ない。 



 「マ・レイニーのブラックボトム(Ma Rainey's Black Bottom)」配信間近ということもあってデンゼル先生のインタビューもたくさん上がってきていて、チャド兄の話をする時についつい現在形で語ってしまいかけて、過去形で言い直すという場面もあって。

 誰にも悟らせなかったチャド兄の精神力のすごさをあらためて思い知る。

 

 ↓メイキング (チャド兄の笑顔が嬉しい)

 
 
 
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 あと、デンゼル・ワシントンがオーガスト・ウィルソン作品に関わることになった経緯を語ったインタビューをいくつか読んだので、覚書として簡単にかいつまんでみました。

 

 デンゼル・ワシントンはオーガスト・ウィルソンに一度だけ直接会っている。

  理由はきかされずに会いに行くようにエージェントに言われ、シアトルの自宅に訪ねて行った。

 その日は一日中しとしとと雨が降っていて、オーガスト・ウィルソンは次から次にタバコを吸いながら物書きをしていた。オーガスト・ウィルソンが「Gem of the Decent」(2003年4月に初演)を執筆中の頃のことだ。

 丸一日一緒に過ごしてただ話をしていたという。どうやって着想を得て戯曲を書いているのかというような話を聞いたりしたそうだ。

 

 デンゼル・ワシントンの元に「フェンス」のシナリオがスコット・ルーディンから送られてきたのが2010年のこと。映像化のオファーを再三拒んできたオーガスト・ウィルソンだったがそろそろ映像化に挑戦してみたいとシナリオを書いていたらしい。

 最初に権利を取得したのはエディ・マーフィーだったという。映画化に向けて動いていたが、結局頓挫してしまいそのまま権利の期限切れを迎えた。そこで権利を押さえたのがスコット・ルーディンだったというわけだ。

 

 デンゼル・ワシントンはシナリオを読みながら、そういえば戯曲を読んだことがなかったということに気がついた。

 1980年代後半にブロードウェイで上演されたオリジナルの「フェンス」を見に行ったことがあって、その時はトロイの息子コーリーを演じていたコートニー・B・ヴァンスに年齢が近かったので、コーリーを想定して”もしもこの作品をやるんだとしたら急がないといけないな”と思ったそうで、そして今回戯曲を読みながらトロイが53歳と書いてあるのを見て”やるなら急がないと”と思ったそうだ。

 舞台でどうしてもトロイを演じてみたかったので、スコット・ルーディンに電話をして言った「舞台をやろう」と。「舞台をやりたいのかい?」と聞き返されたので、「舞台をやろう」ともう一度言って、リバイバル上演を実現し、トニー賞も受賞した。

 それが2010年のことだ。

 

 その後2013年までは舞台をやったことで失った分、少しお金を稼ぐ必要があったので「フェンス」の映像化について考える暇は全くなかった。

 2013年の後半から2014年にかけて「A Raisin in the sun」の舞台をやりながら、自分の中で「フェンス」の映像化に取り組もうという気構えができてシナリオを再び読み始めたという。

 

↓「A Raisin in the sun」

 

 しかし読んでいくうちにシナリオがエディ・マーフィとジェームズ・アール・ジョーンズを想定して書かれていることに気がつき、加えて、その時はじめて「オーガスト・ウィルソンの要望で作品を撮るのは黒人監督でなければならない」ということを知る。

 すでにスコット・ルービンと組んでいて、他に監督が思いつけなかったのでデンゼル・ワシントンは自分で監督をすることにする。

 心に固く決めていたことはとにかく忠実にオーガスト・ウィルソンの作品感を再現することだった。

 

 舞台をやらずに「フェンス」を映像化するというのは全く自分の中でイメージできなかったので、どうしても舞台でやってみる必要があった。

 そして映画を作る段階になったとき、「トロイ」を演じる男優を新たに探す時間の余裕がなかったらしい。

 

「フェンス」のラストで庭に家族が集まって話しているその背後で誰もいないのに画面の片隅で裏門が閉まるシーンがあるが、あれはまったくの偶然で起こったことだったそうだ。

 「最後にオーガスト・ウィルソンが入ってきて僕らと一緒になるんだ」とデンゼル・ワシントンはそこに門が閉まる音を付け加えたとか。

 撮影中デンゼル・ワシントンはシーンを削るか残すか悩んだ時などオーガスト・ウィルソンを夢にみて夢の中でそのことを尋ねたりしていたそうだ。

 

 デンゼル・ワシントンには今後もオーガスト・ウィルソン作品を映像化していく使命があるが出演するつもりも監督するつもりもなくプロデューサー役に徹するつもりだそうだ。

 第2弾の「Ma Rainey’s Black Bottom」もまず監督探しから始めた。第3弾は「The Piano Lesson」を予定していてジョン・デヴィッド・ワシントンが出演意欲を見せているとか。

 

 俳優として映画に出る予定はコロナウィルスの影響もあって特にないらしく「イコライザー2」以降、すっかり俳優業から離れているが当人的には全く気にならないと話している。  

 

 って、デンゼル先生の演技まだまだみたいんですぅ。

 コロナウィルスが消え去った暁には俳優業も再開してくださいねー!!!

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅: 100%

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