あまりにも強烈。
1940年代のミシシッピー・デルタ。
ローラはピアノを弾くことや芸術を愛し、都会の生活を好む女性だった。
兄の上司ヘンリー・マッカランと結婚し、農業をするのが長年の夢だったとヘンリーがローラに相談なく農地を買ったため、田舎へと一家で引っ越すことになる。
その農地ではハブ・ジャクソン一家が農業を行なっていた。
その土地はハブの祖父が地主から貰い受けた土地だ。しかしそれを証明する書類などはなく、そもそも彼の話を誰に耳を傾けようとしない。
その農地の地主となったヘンリーはジャクソン一家が黒人であることから当然の権利であるかのように彼らに対して使用人のように命令し、自らの雑事を手伝わせる。
(ちょっとうろ覚えになってきているので、ハブと土地の関係についてがちょっと自信がないのです)
相手の都合や事情を考えず自分の都合だけで自分の要求を通すということがマッカラン家からジャクソン家に対して行われるわけなんですが、ヘンリーははなっからいけすかないやろうとして描かれているのでその振る舞いも腹はたっても驚きはない感じなんですが、ローラですらも無意識に彼らを自分たちに仕えるのが当たり前と受け止めているところが描かれているのがなかなかショッキングでした。
晴天の霹靂とはこのこったと言わんばかりの真珠湾攻撃には「すみません。ほんとうに申し訳ないです」という気持ちにジャクソン家の皆さんに対してなってしまいました。
このせいでジャクソン家の長男ヘンリーは兵隊に取られてしまうわけですが、なんかもうタイミングが”追い討ちをかける”的な感じだったので。
マッカラン家はヘンリーの弟が入隊します。ヘンリーの弟ジェイミーは遊び人なところがありつつ普通に”いいヤツ”な感じ。
これ以上は致命的ネタバレとなってしまうので詳述しませんが。
圧倒的な正当性を微塵も疑うことなく残忍に振る舞う人が多数派として存在することの恐怖というか、そちら側が”常識”な社会の怖さというかホラーですよ。
そりゃ順応してそっち側に疑いを持たずにいられるなら結構なことですが、そこに当てはまらない場合、居場所どころか生きる場所がなくなるっていう。
憤りとか恐怖を通り越して、なんでこういう”人”がいっぱい存在するようなことになったんだろうという疑問が。
だって、よくきくコピーで”人種差別者として生まれる人間はいない”っていうなら、成長過程でそうなるよう刷り込まれていくというか、それが当然の世界で育つから疑問も持たないということなんだろうけれども、いつからそんなことになったのかって疑問がどうしたって。
絶望しかない中で究極の選択を強いられるわけですが、よくあれだけの”思いやり”判断ができたものだともうなんというか。
本当の強さとはこういうことだよとか。
なんかもう最初から最後まで色々たまんない感じでした。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
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