すごくよかった。
カトリーナが接近する最中のニューオリンズの病院。 予定日より5週間早く産気づいた妻アビゲイルと共に病院に駆け込んだノーランは担当医に指示され一階のロビー待っていたが、ハリケーンの接近に伴って2階に移動するように言われる。
やがて担当医がやってきて赤ん坊は女の子で無事に生まれたがまだ自力で呼吸ができないため人工保育器で48時間経過をみまもる必要があり、アビゲイルは出産時の大量出血のため死亡したと告げられる。
放心状態のまま保育器の中の赤ん坊と対面するノーラン。妻がいなければ子育てなどどうしていいかわからないと嘆くノーラン。その間にもハリケーン・カトリーナが猛威を振るっており、病院は入院患者たちを避難させ始める。動きに気がついたノーランが担当医を見つけ、どうするべきなのか尋ねると、保育器を移動させるのには人手がいるので、動ける患者を避難先に送り届けたらすぐに戻ってくるし、万が一停電しても予備電源が起動するから大丈夫と言って去っていく。
担当医が戻ってくるのを待っている間にノーランは病院の中から自分と保育器の中の赤ん坊以外誰もいないことに気がつく。
その時、大量の水が病院の1階の扉を突き破って流れ込んできたため建物は停電となる。
人工保育器は予備電源で動いていたがバッテッリーが劣化しており、ノーランは必死で予備のバッテリーを探す。
人工保育器のバッテリーを切らさないためにひたすら手動で充電しなくてはならなくなるノーラン。
3分ぶんしか充電できず、充電を繰り返すごとに刻々と持ち時間が減っていく。
3分保てていたものが2分50秒となり2分40秒になりといった具合である。
2分50秒ごとにノーランはジェネレーターのレバーを回さなければならず、人工保育器の電源を保つことが最優先事項だ。つまり、ノーランが保育器から離れていられる時間がとんでもなく制限されるわけで、助けを呼ぼうにも予備の電源や食べ物を探そうにもその時間内に行動しなくてはならず、保育器の電源が完全に落ちてしまう前に戻ってレバーを回さないといけない。
赤ん坊が自力で呼吸できるようになるまでに必要な時間は一応48時間ということにはなっている。 助けがこなければ、48時間、ノーランがレバーを回し続けるしかない。
外界と切り離された状態で、状況がまったく掴めない。
確かなことは電源が落ちれば赤ん坊は死んでしまうということだが、疲労や空腹でノーランが眠りに落ちてバッテリーの持ち時間以内に目を覚さなかったら赤ん坊の死に直結してしまう。
ノーランがどこまで持ち堪えられるのか。
救助は間に合うのか。
訳のわからない状態で、それでも自分がなんとかするしかない状況。
孤独で先行きもちっとも見えずなんとも心細い。
いきなり災害に見舞われて途方に暮れてしまうような心境に通じるのはもちろんのこと、おそらく初めて子育てをする親の心境にも通じるものがあるのだろう。
この映画をずーっと見たいと思っていたし、同時に見るのがすごく怖かった。
ポー兄がラッシュを見たとき自分の演技にもすごく満足そうだったと言う話を聞いていたから。
だからすごく見たかったし、同時にもしもやっぱりポー兄の演技にぎこちなさを感じるような仕上がりだったらどうしようかと不安でなかなか見る決心がつかなかった。
でも感謝祭が近づいてきて、見てみようという気になった。
映画を見ながら、ノーランを演じているというよりはもうこれはポー兄だなと。まだ他の俳優さんとのキャッチボール的な演技は厳しい部分もあるのだけれど、でも幸いこの映画はほぼ一人芝居。
すごく正直に自分を曝け出していて、監督のことをとても信頼しているんだなと感じた。
監督もよくここまでポー兄を信頼してポー兄の資質を引き出してくれたものだと。
まるでポー兄の人生の集大成を見ているようで、なんだか色々とたまらなかった。
ポー兄が全力を投じてこの映画に取り組んだことはもう明らかだし、この映画を作り上げることができて本当に良かったと思った。
なんというかポー兄の娘さんのためにもこれがあって良かったって感じてしまって。
これを見るたびにミドゥさんは間違いなくポー兄の愛を感じられるだろうなって。
信頼できる人たちと一緒に精一杯自分を出し切れるような映画作りができて、ポー兄本当に良かった。
そう思った。
2013年12月10日、 エリック・ハイセラ監督がポール・ウォーカーへの思いをImgurにポストしました。
Some OC on directing Paul Walker
とても監督の想いがこもっているので、ちょっと抜粋意訳してみました。
僕が初めてポールと会った時は彼にこの役がこなせるなんて全く思わなかった。
話しているうちにポールがこの役に彼自身と相通じるものがあると強く感じていることや、何よりも僕と同じくこの映画を通して何か証明したいものがあることがわかって、それで一緒に組むことに決めた。
予算の関係上、撮影には18日間しか割けなかった。おかげで睡眠不足は当たり前。どのシーンもせいぜい2、3テイクしか撮る余裕がない。
こんな状態で撮影をしたらどんな俳優でも癇癪を起こしそうなものだけれど、ポールは一度も怒らなかった。一度も遅刻しなかったし、僕の撮影クルーの名前を全員覚えていた。きつい現場で愚痴をこぼすことなく僕の要求にも俳優としてきちんと従ってくれた。
撮影クルーの多くがハリケーン・カトリーナで実際に被害を被っているか、家族の誰かが被害を被っていて、ポールは彼らの話に真剣に耳を傾けていた。
撮影を行ったのはハリケーン・カトリーナで大きな被害にあい、七年経過した後も閉鎖されたままの病院。カレンダーもあの日のまま残っていた。
水が流れ込み、病院が浸水している間のシーンをたった1日で撮影しなければならず、シーンごとにポールは濡れた衣装から乾いた衣装に着替える必要があったけれども、その時も愚痴一つこぼすことはなかった。
スタッフに「頑張ってくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えながら、場を和ませたりして撮影スタッフみんなのモチベーションを高めてくれた。彼と一緒に水に浸かっている必要のある音響スタッフたちは特に励まされていた。
ポールのことをハンサムすぎるとか、例のあの映画にでているという理由で嫌いたいと思ったとしても彼と一緒に5分も過ごせば、彼が本当にいい奴だってことがすぐにわかる。
撮影が始まって5日後ぐらいに彼がなかなかのオタクだってことがわかって、撮影の合間にネットで見つけたおバカな画像や写真を見つけてはお互いを笑かしあったりしていた。それが僕がこのImgurメンバーになった理由なんだけどね。
あるとき、カメラがポールの動きについていかなかったことがあって、それがポールの大事なセリフの途中のことで。僕も彼もそのシーンがこの映画の要になるってわかっていた。彼がもう一度気持ちを作り直せるようにできることはなんでもしたよ。
その結果、彼の演技の中でも一番素晴らしいものになったと思う。そのシーンを見たスタジオの他のメンバーも同意していた。
先月、自分には絶対に来ることはないと思っていたような役のオファーが来たって、ポールがすごく嬉しそうに僕に話してくれたんだ。
彼の死以来、僕の感情はぐちゃぐちゃだった。悲しくなって落ち込んだり腹が立ったり虚しくなったり。
この映画は彼のスワン・ソングじゃなくてスプリングボードになるはずだったのに。
この記事をここにポストしようかどうしようか僕はかなり悩んだんだ。
だって、これで僕が映画を宣伝しようとしているって思われたくなかったから。
ただ僕はここのメンバーに去年僕とポールがこのサイトからどれだけ笑いをもらったかってことを伝えたいってずっと思っていたんだ。
彼の死の数日前、映画のプロモートでポールと一緒にいたんだけど、その時もここで見つけた画像とお気に入りのコメントをポールにみせたんだ。そしたらポールはめちゃくちゃウケて大笑いして。ポールの笑いって伝染するんだ。だからそこにいるみんなも釣られて笑い出しちゃって。
多分、ここにいる何人かは君がアップロードしたおバカな画像が、誰かの助けになっているなんて思ってもいないかもしれないけれど、実際、僕とポールは地獄のように暑かった病院の中で、そういったおバカなポストに本当に何度も救われたんだ。
まだここにいれば、ポールも”ありがとう”って言ったと思う。
Rest in Paradise, Paul Walker.
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅: 61%