So Be It

見た映画の感想。時にネタバレを含んでいますのでご注意ください。

フルートベール駅で ( Fruitvale Station ) 

2009年にフルートベール駅で警官に殺されたオスカー・グラント氏の最後の1日を描く。

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 オスカー・グラント氏のお母様は生涯あの日に「車ではなく電車に乗って行きなさい」と言ったことを悔やむことになるのだろうなぁと辛い。

  こういった案件が後を絶たないということが問題で、政党がどちらであろうがどうにかすべく対処しなくてはいけない問題であるはずなのにどうにかならないのがなぜなのか。

  すでに手錠をかけて取り押さえている人間に対して発砲するということ自体がよくわからない。テーザー銃と間違えたというが、すでに手錠をかけて取り押さえている人間に対してテーザー銃を撃とうとしたこと自体がよくわからない。

 一人で対峙していたわけではない。

 複数で対処していた。

  相手は爆弾を持って今にも起爆させぞーと脅している自爆テロリストでもなければ散弾銃やら機関銃をもって無差別大量殺人の真っ最中な相手でもなんでもない。

 この映画の主人公は電車の中で喧嘩をふっかけられその騒ぎのせいで通報がいき逮捕された。

 喧嘩をふっかけた相手は逮捕されていない。

 白人だからだ。

 彼と同じく前科者ではあるが白人だから目をつけられない。

  メタヒューマン相手に戦っているわけではない。

 訓練を受けた警官がそういった事態に冷静に対処できないというのは訓練自体に問題があるということになるのか。

  悪どい独裁政権だというのでもない限り、ほったらかしておいて平気な案件とはとても思えないのだけれど。

 ドラマや映画のおかげでアメリカの警察はすぐに犯人を撃ち殺すイメージがあって、取り調べをしようという概念はないんだろうかと不思議になったり、アメリカは銃社会だからそういうものなのかなと思っていたけれども、やっぱり異常なことという認識でよくて。

 しかもそうやって警官に殺されているのが黒人の人ばかりで、白人の容疑者の場合はたとえ銃を手にもっていたとしても警察も銃を使うことなく取り押さえようと、それこそ命がけで相手に立ち向かったりする。つまり出来ないわけではないのだ。

 それとも、録画されていないだけで、白人の人たちも黒人の人たちみたいに不当に撃たれたりしているんだろうか。

 いちどトランプ大統領が「黒人のひとたちが警官に撃たれて殺されている事実をどう思いますか?」と記者に尋ねられて「黒人だけじゃないよ白人も殺されてるよ」と答えていたけれど.....。

 

 なんだかどんどんホラーだな。

 

    先日もまた似たような事件がおこってNCIS:LAでサム・ハンナを演じているLL cool Jが怒りを爆発させていたけれども

 
 
 
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 政治とか政党とか主義とか関係なしに訓練を受けているはずの警官が黒人の容疑者と対峙すると、”恐ろしくて発砲”とかどう考えてもおかしいだろうと。

 自分の家族や自分の愛する人が犠牲にならないと「しょうがない」で流して深刻に受け止めないのはどうかしていると。

 

 うん。

 せめてまずこの点だけでもどうにかしたらどうなんだと思うんだけどなぁ。

 それが難しいとなっているところでなんというか....。

 

 ”いつ人生の終わりがくるかわからないから、朝家を出るときは子供たちと妻にはかならず愛していると伝えてから出かける”とコメディアンのデイヴ・シャペルが話していた。

 それは誰にでもいえることで。

 絶対的安全など誰にも保証できない。

 地震、火事、洪水、交通事故、病気、戦争、犯罪、何万光年の隕石が飛んできた先にたまたま居合わせてしまったせいで人生の終わりがくることだってある。

 噴火も地震もいまのところ誰にも正確な予知はできない。

 怖がってもしょうがないことを怖がってもしょうがない。

 どうにもできないことはこの世の中にはいくらでもある。

 

 

  スマホで録画することができるようになって根強い人種差別や警官の過剰暴力が実際にアメリカにはあるのだということを多くのアメリカの人たち目にすることができるようになった。

 先日もアジア系アメリカ人の不動産業の人がアフリカ系アメリカ人の人に対して「ここは黒人禁止区域だ」と言ってる動画が出回っていて気持ちが沈んだ。

 それどころか「私は人種差別主義者」だとはっきり言ってのけた。

 最初は「何この人いまどき信じられない〜!😨」となってしまったけれども、よくよく考えれば自覚的に人種差別主義であることを選んでいる場合は、あのアジア系の人にもそうなってしまうだけ何か理由があるのかもしれないと、ついつい考え込んでしまう。

  録画して証拠として残すというのは大事なことかもしれないけれども、個人個人についてもネットにあげて皆で糾弾し、ついには社会的地位まで奪うところまでおいつめるとなると、どうしても抵抗感を覚えるというか。

 これはこれで魔女狩りになってはいないかと。

  そうすることで、あのアジア系の人の人種差別感が消えるとは思えないし、むしろ一段と憎しみを深くすることになるだろうから、なんというかこれも負の連鎖の一環な気がして。

 警官の不当暴力を録画してネットにあげて世間的に認知してもらう行為とはまた別なことのようなきがする。

 

 とはいえ、警官による不当暴力の動画を目にすると、録画して証拠として残すのは大事なことではあるけれども、警官に押さえつけられているその人が命を失う前に、同僚の警官のひとや周囲にいる人たちやそれをとめることはできないのだろうかとつい思ってしまう。

  自分がその場にいたら恐ろしくて一歩も動けないことは100%自覚しつつ、それでもまだ間に合ううちになんとかできないものなんだろうかとついつい考えてしまう。

 ジョージ・フロイドさんのときも8分43秒の間になんとかできなかったのかと。

  その場にいた人たちを責めるということではなく、そういうシチュエーションになったとき、どうすれば不幸な死者や怪我人や逮捕者を出さずにすむか、そういう時じゃないときに考えておくのは大事なことのような気がして。

  地震や洪水だって、避難訓練とか耐震工事とか備蓄とかそういうできる範囲で対策する感じで。

  

 感情的になって狭い視点で早とちりする私など、あっという間に差別主義者やヘイターになってしまうんだろうなぁとか思ってしまう。

 

 うーん、難儀なこっちゃ。

 

 でもなんというか、たとえば自分が気がつかないうちに差別発言をしていたとして、それで相手を傷つけたり憤慨させたりしてしまって、そこで自分に差別意識があったとはじめて認識した場合、それをみとめて、そのことを正直に話して謝るしかないと思う。

 心をこめて。

 尊敬をこめて。

 相手に許してもらう期待をしてはいけないし、強要してもいけない。

 そこからはどれだけ自分を修正できるかだ。

 相手に許して貰えないのならその痛みと共に生きていかなくてはいけないし、許してもらえたなら、それはもうラッキー・ボーナスのようなものだろう。

 一番悪いのは「もう謝ったやん」と歯牙にもかけない姿勢で....。

 

あと「完璧な人間などいない」とよくいうけれど、間違うと案外世間は容赦ない。

 世間というかSNSとマスコミかな?

 そしたらまったくそのことをニュースで見るまでしらなかったとか、自分でニュースをみたときは興味なかくてスルーしたのに、SNSやニュースなどで大炎上したりしているのをみるといつの間にやら「批判」的になってしまうというのは....。

 こういう感じのことを「Availability Bias」というらしい。(←LL cool Jが言ってるのをきいてはじめて知った)

 目撃証言を報道すると、その傾向に他の証言も寄っていってしまうというのと同じ感じなのかな。

 

 んー。

 

 

 あー、なんとなくこの映画についてあまり触れてないような。

 

 この映画は、特別ドラマチックに描かれているわけでは全然なくて、すごく当たり前の日常が描かれる。

 ごくごく普通の日常。誰にでも覚えがあるような、日常。

 それが唐突にシャットダウンする。

 そのことが、とても身近なものに感じる感じ。誰の身にも起きうるような。

 アフリカ系アメリカンの人たちにしか起こらないことだから、馴染みがないからピンとこないというような作りにはなってないと思う。

 ごくごく当たり前の日常の中で、不意に顔をのぞかせる死。

 誰にでも起こり得る話であり、そしてオスカー・グラント氏の身にも起こった。

 

 社会生活を送る上で絶対起こってほしくない悲劇。

 当事者になるまえに、こういった悲劇を避けるにはどうすればいいのかを考えるのが大事なのだと。

 だって、人間はそうやってこれまで歩みをすすめてきたはずなんだから。

 きっとより良くことは可能なんだって思いたい。

 楽観すぎるとかなにもわかっていないと言われようが、ダメなんだって諦めてしまう方がいやなんだからしょうがないじゃんかよー。

 

追記: 

いまImdbみて驚いた。この映画の監督「ブラック・パンサー」の監督なんだー。

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅: 94%

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