したたかに、そしてたくましく。
ジェイクは殺人罪で懲役15年の有罪判決を受け、刑務所に服役して6年が経過していた。 ある時、ジェイクは刑務所所長に呼び出される。ジェイクの息子をジーザスをビッグ・ステート大学に入学するよう7日間で説得できたら刑期を短くすると知事が約束したというのだ。ジェイクの息子は才能ある期待の新人バスケットボール選手として、NBAか大学リーグどちらを選択するのか世間からの注目を集めていた。ジェイクは条件を飲むが、刑務所にはいることになった事件からジェイクと仲をこじらせており、説得どころか話をきいてもらうのも不可能に近い状態だった。
クィーンズブリッジ団地の当時の空気感をリアルに伝えてくれる映画だったと思う。 ストリート・バスケ、 それをみになんとなく集う人々、バスケの試合を終えても家に戻りたくなくてなんとなくたむろしていた夏の夜。
いつからか、だったらパーティやろうぜと音楽をかけだす DJが現れ皆が踊りだし、Hip-Hop文化が生まれたともきく。
ジェイクはバスケットの才能にめぐまれ、おそらくかつてプロを目指したこともあったのだろう。 才能が足りなかったのか、事情が許さなかったのかはわからないけれど、その夢を息子に託し、毎夜、息子を鍛えた。とても厳しく。
詳細は説明されないが、ジェイクの身振りからおそらく彼はかつてギャングの一味だったのだろうと推測される。
将来を約束されたジーザスに金の匂いをかぎつけた人々があつまってくる。
少しでも利益にあずかろうと、または嫉妬妬みから足をひっぱろうと、街に残される側の気持ちはさまざまだ。
ジェイクはできることならジーザスを説得して減刑されたいという思いはある。
しかし、息子のジーザス以上に自分を憎み、許せずにいるのはジェイク自身にほかならない。
自分の短気と粗暴さが、この世でなによりも大切にしたかった命を奪ってしまった。 ジェイクの短気さ、おそらくはそのことがプロになれなかった原因かもしれない。
将来を約束されたジーザスが直面するのは人々の欲望だ。
お金、ドラッグ、セックス。 若い時に成功し大金を掴めば、エゴも膨らみあっという間に呑まれてしまう。
ドラッグ・セックスとくれば当時ならばエイズ感染リスクも高まるわけで。
力にならせて欲しいと親身な顔をして近づいてきたエージェントは美味しい蜜を吸えるだけすって、あっさりと次に乗り換える。
こういったことはなんとなく読んだりきいたりしたことはあったけれども、これほどの圧を受けるのかとあらためて驚いた。
そこで自分を見失わず、そして甘い誘惑に惑わされずにいる精神力というのはとんでもないなと圧倒されたり。
仮にジェイクが刑務所にはいらず、ずっと父親としてそばにいればジーザスがこういう目にあわなかったかどうかといえば、それも難しいところで。
でも確かなことはジェイクがジーザスに街から出ていくことのできるスキルと強さを与えたということだ。
それを感謝するとかそういうことでもなく、なんというか、父親を恨み続けることが自分の人生においてなんのプラスももたらさないのであれば、もう忘れて前に進めと。 自分の人生を手に入れろと。
一人でも多く、環境に呑まれず成功をつかんでほしい。
生き延びてほしい。
そういう強い願いや思いを感じるような。
1998年、ギャング同士の抗争事件や発砲事件が頻発していた当時。
当時のHip-Hop界隈の話を読んでも荒れ方がとんでもないことが簡単に伺いしれる。
したたかに、そしてたくましく生き延びる。
このまま潰されてしまうものかという意地。
このまま消されてしまうものかという気骨。
パブリック・エネミーがサントラを担当。
この曲がまたすごくいいんですよ!
映画の意味をグッと伝えてくれる感じ。
ジェイクを演じていたのがデンゼル・ワシントン。
屈しない気骨と誇り。
語られないのにふとした瞬間に垣間見せるハスラーだったことを物語る凶暴な表情。 墓石にすがりついたシーンにジェイクの悔恨がとんでもなく伝わってきて、ジェイクなりに懸命にジーザスが自分にならないように鍛えていたのだと。
愛情の示し方を知らないジェイクなりの愛情だったのだと感じられた気がして。それはジェイク自身ももしかしたら認識できていないものだったかもしれないけれども。
あの中で潰されることなく生き抜くための強さがなによりも必要とされていた時代だったから。
くぅーーーーっ、デンゼル先生かっこええええええ!!!!(←そこかい)
この映画にある 1on1でデンゼル先生はガチでシュートをいれたそうです。
シナリオではジェイクが一点も決められずに完敗すると書かれてあったのですが撮影がスタートするとデンゼル先生ってばガチでいれちゃったとか。ちなみにジーザスを演じていたレイ・アレンはバスケが本職。
もうデンゼル先生ってば負けず嫌いなんだから!
それからそれからデンゼル先生といえばもう一つとっても嬉しいニュースが。
チャド兄出演の未公開作品がもう一作、今年ネトフリで配信される予定ということで、それがなんとデンゼル先生のプロデュース作品なんです。
タイトルが「Ma Rainey's Black Bottom」で原作はオーガスト・ウィルソン。 「フェンス」でも書きましたが、デンゼル先生が映像化権を託された作家さんの作品です。作品の映像化をさせて欲しいとなんどもなんどもオファーされたものの、オーガスト・ウィルソンは自分の作品は白人の手には任せられないと頑として拒み続けていました。
2005年のある日、デンゼル先生は先生のエージェントからこの戯曲作家のオーガスト・ウィルソンに会いにシアトルに行くように指示されたそうな。
その日、シアトルは雨がふっていて二人してポーチに座っていたとか。 そもそもデンゼル先生は自分がなんの目的でオーガスト・ウィルソンに会いに来てるのか聞かされていなかったので何を話したらいいのかもわかっていなかったそうだ。
オーガスト・ウィルソンの方もタバコをよく吸っていたけれども特にデンゼル先生に何かを尋ねてくるとかいうこともしなかったとか。
デンゼル先生はオーガスト・ウィルソンにどうやって戯曲を書くのかって尋ねたり、他愛ない話をポツリポツリとかわしつつ、ほとんどの時間は二人でただ黙って座って景色を眺めたりして、それで終わり。
その数日後に「フェンス」の戯曲がデンゼル先生のもとに送られてきて、“演じたいか?プロデュースしたいか?監督したいか?“と尋ねられたとか。
オーガスト・ウィルソンは1日デンゼル先生とのんびり過ごすことでデンゼル先生の人柄を見極め、自分の作品を託すことに決めたということになる。
デンゼル先生はオーガスト・ウィルソンのほかの作品の映像化も10作品ほど委ねられているそうで、HBOでやることになりそうだとか。
でもそれはデンゼル先生プロデュースするだけにとどまると思うと。
デンゼル先生がオーガスト・ウィルソンにあったのはその日1日だけ。 2005年の10月にオーガスト・ウィルソンは亡くなっているので、自分の作品をたくせる心から信頼できる人間を探していたにちがいない。
というデンゼル先生にとっては特別な作品なので、その作品にチャド兄が関わることができたというのが嬉しくて。
なによりもチャド兄がデンゼル先生と一緒に仕事をする時間を持てて本当によかったと。
この記事が更新される頃には配信されているかな? (12月18日にネトフリで配信予定のようですが...日本でも配信されるのかな???)
今年60歳の誕生日をむかえたChuck D。
現在も精力的に活動中。
毎日のように鋭いメッセージを送り続けています。
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