So Be It

見た映画やドラマでFilmarksにない作品の感想と覚書。時にネタバレを含んでいますのでご注意ください。

完全なる報復 ( Law Abiding Citizen )

皮肉も皮肉。

完全なる報復 (字幕版)

完全なる報復 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

 いやなんかもう「いやまぁ...おっしゃる通りなんですけどもさ」と終始アグアグさせられてた感じで(←悔しいがどう言い返せばいいんだろう的な感じ)

  

 ニック・ライスは有罪判決を96%と勝ち取れる優秀な検事だった。

 担当事件の一つで強盗殺人で母親と幼い娘が殺された事件を担当していたが提出した証拠が無効とされ犯人を有罪とするために司法取引に応じる。

 内容は犯人のうちの一人を死刑、もう一人は証言をしたということで懲役5年。

 司法取引に応じなければ裁判に負けて二人とも無罪になってしまう可能性が高かったと被害者の母娘の夫であり父であるクライドに説明する。

 それから10年後、死刑執行日にニックは部下のサラと共に死刑に立ち会うが、犯人は無罪を訴えながらひどく苦しみながら死亡する。

 通常死刑執行でつかわれる薬とは違う薬にいつの間にかすり替わっていたのだ。

 さらにすでに出所していたもう一人も惨たらしく惨殺された状態で発見される。

 

 犯人はクライドなのだが目的はただの復讐ではない。

 10年前に司法取引にかかわった人間を次々と容赦なく殺していくことで法システムそのものに対して激しい制裁を加えていく。

 最終ターゲットはニックだ。

 

 この映画がとんでもない皮肉になっているというのは、白人であるクライドが法システムについて糾弾するとき、それは現実でおこっている黒人の人たちの冤罪事件でおこなわれてきていることが指摘されることだ。

 ニックがそのことを知らないはずがないというか、むしろ今更聞かされるまでもない話で、彼はおそらく内側から少しでも変えたいという思いがあって家族との時間を犠牲にして仕事に打ち込んできたのではないかと思う。

  新しい証拠があがってきたので再検討してほしいと弁護士側がお願いしても「担当検事が休暇中で」というのが、これまで見てきた冤罪ドキュメンタリーで、一番よくきいた言い訳のパターンだったし。

 ネトフリにあるドキュメンタリー「TIME: The Kalief Browder Story / 投獄: カリーフ・ブラウダーの失われた時間 」で16歳の時にカバンを盗んだとして逮捕され、大人と同じ刑務所にいれられてしまう。

 罪をみとめれば家に帰してやるといってもカリーフは「やってない罪を認める気はない」と。そして裁判さえ行われればわかってもらえると信じて、刑務所の中で刑務官や囚人たちから受ける暴力に耐え抜く。

 ”暴力に耐え抜く”と言葉で書けば「やってない罪をみとめるぐらいなら自分もやる」と簡単にカリーフの行動に頷けるかもしれないが、その代償にかれが受けた肉体的精神的バイオレンスは CIAが敵のスパイや軍人相手に行う拷問と同じもので、それを十代の少年が耐え抜いたのだ。

 裁判所にいくたびに「担当検察官が休暇中で」とか「証拠を検討するのに十分な時間がなかったので」という言い訳で、また長い長い順番をまたなければならない。

 そんなことを3年も繰り返した。

 カリーフのお母さんも長い時間バスにのって裁判所を訪れるのにそれだけで終わってしまう。

 それを「バカンス中」で後回しにするってことを平気で理由にできて、それがまかり通ってしまうそこらへんの神経がわからない。

 だったら、せめて保釈金なしで保釈して家に返してあげてよ!!

 だってまだ有罪ってわからないわけだし、海外逃亡できるようなお金がどこにあるっていうんだ!

 逃げるのだってお金がかかるんだよ!!!💢

 闇ルートだったらなおさらだろうが!!!💢💢💢

 しかも、このドキュメンタリーがどこまでも辛いのは刑務所を出られたからって(しかも深夜に釈放で外に放り出すって意味不明だ)、苦しみは終わらない。

 カリーフ自身の苦しみも家族の苦しみも。

 呪縛から逃れようとしつつ向き合うことからも逃げなかった彼が最終的に選んだ結果が....。

  こんなのは所得の問題とかではない。 

 そんな言葉だけで納得してしまっていい話じゃないと思う。

 そんな言葉だけではカバーできない。

 どこかの段階でどうにかできなかったのか。

 どこかの段階で。

 カリーフという人がついに力尽きてしまうその前に。

 この人の強さは本当に尋常ではなかったのだと思う。

 

 そこまで救いようのない状況に追い込まれたとき、どうすればよかったのか。

 このドキュメンタリーをみた後ほどしばらく動けなくるほど打ちのめされたことはない。

 

 と、いうのを踏まえた上でこの映画をみると、そこまでしないとどうしようもない話なのかと思う一方で、いつこういう事態が起こってもおかしくなくて、でもこういう事態になればもう救いようのない負のスパイラルに陥って、破滅にまっしぐらなのではないかと恐ろしくなってしまう。

  理不尽への怒りや悲しみは容易に人を安易な解決法に駆り立ててしまう。

 共感には感情が不可欠だけれど感情はとてもやっかいだ。

 クライドのいうことはもっともだけれど、だからといって個々の命を無作為の奪うやり口にはまったく納得できない

 。”そういうことじゃない!”というのは激しく思っても、ではどう切り返すのか。  

 ニックはどうレスポンドするのか。

 

 難しい問題に逃げずに真っ向から取り組んだ気骨を感じる映画だった。

 

 と、思ったら監督、F. Gary Grayだー。

 クライド役がジェラルド・バトラーで、全然ジェラルド・バトラーっぽくなくて、この人って「ザ・俳優」なんだなぁとはじめて心から実感した。

 

 にしても怖い殺し屋さんだな。

 そんな風なポジションの殺し屋さんって実在するんだろうか。

 きっとするんだろうなぁ。。。

 

 いやはや。  

 

 にしても、ジェイミー・フォックスってかっこいいなあ!

 って、imbdチェックしたら結構この人の映画みてるしー!!!

 私って相当なレイシストだなと反省。

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅:26%

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