So Be It

映画の観方と楽しみ方を勉強中。ネタバレを含んでいますのでご注意ください

ルシファーとアメナディエルと考えるBlack Lives Matter

 Netflixで絶賛配信中のドラマ「Lucifer」でルシファーを演じているトム・エリスが俳優ブランドン・カイル・グッドマンに自分のインスタを解放して、ブランドンがシェアしているBlack Lives Matterを学ぶための情報や"Black Folks"というインスタライブを同時配信している。

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 ↓これがイントロダクション

 

 この"Black Folks」の2回目に「ルシファー」でアメナディエル演じるデイヴィッド・ブライアン・ウッドサイドが登場。

 

「 Black Folks」4回目の配信を終えた後、「ブリッジ・モーメント」と称してトム・エリスが登場してこれまでの配信やBlack Lives Matterムーブメントについて自分の心情をブランドン・カイル・グッドマンと会話をする回がある。

 

  トム・エリスがとても正直に心情を吐露してくれており、それがもうほんとうに「わかるわー」というか、Black Lives Matterについて学ぶということはまずは自分のエゴとの戦いでもあり精神的に消耗しまくるものなんだなと。 

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 D.B.ウッドサイドと6年共演してきて、生涯を通しての友人だとおもっていた相手のことなのになぜ自分は気がつくことができなかったのか、トム・エリスはそのことで受けたショックや自分のエゴのへの気づき、そしてようやく見えてきた”ホワイト・プリビレッジ”について、その過程もほんとうに正直に吐露してくれている。

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 おかげで黒人の友人をもつ白人のひとたちがなぜ今回ものすごい衝撃を受け、半ばパニック状態に陥ったのか、そのことがようやく私にも理解できたような気がした。

 トム・エリスのその話をきいたブランドンが「それをきくと黒人ってほんとうに達者な役者だなぁって思うの」と(ちなみに彼はクィアで彼の旦那さんは白人男性だ)。 どういうことかというと、白人の友人に対して国内であからさまな人種差別が存在しているけれど、あたかもそのことを自分は気にしていないという風に振る舞うことにとてもたけているということらしい。

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 そしてそれがどれほどの精神力を要することなのかはD.B.ウッドサイドとブランドン・カイル・グッドマンの回をきけばよくわかる。

D.B.はジョージ・フロイド氏の死をうけてSNSのなにもかもがBlack Lives Matter一色になった時、しばらくSNSから離れていたそうだ。

 それからしばらくしてストリートのあちこちでデモが展開しているニュースをみて自分が衝撃受けたことに衝撃をうけたという。

 「何十年もプロの俳優として訓練を受けてきたにもかかわらず、感情がコントロールできなくなった」そうで、今回のことがあるまで自分でも自分がこれほどの憤りを蓄積させていたことに気がついていなかったという。 ずっと向き合うことを避けてきた。意識の下に押し隠してきた。カウンセリングでもこと人種については一度も話したことがなかったという。

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 そのことをきいた時のショックをトム・エリスは話そうとして、思い出しただけで思わず声をつまらせてしまうぐらい衝撃を受けていたのだが、それはアメリカで生きる多くの黒人の人たちにとってはあるあるネタでしかない。

 ただ、黒人の人たち同士でそれをオープンに語り合える機会はほとんどないらしい。多くの黒人の人たちがそういった鬱屈を内に隠しもっている。

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 ”ホワイト・ボイス”の話もすごくわかりやすかった。

「誰かに後をつけられていると最初に感じたのは何歳の時だったか?」という話でブランドンがD.Bにうちあけた話だ。近所をあるいていて祖母の薬をとりにいく途中二人の制服警官に後を付けられていることに気がついたそうだ。

 「それまでに祖母から警告されてはいたけれども実際に経験したのはそれがはじめてだった」ブランドン。そこで機転をきかせて、自分から警官に近づいていき、警官に可能な限り白人っぽい喋り方で道を尋ねたそうだ。

 ブランドンがそれを話すとD.Bは「よくその話をしてくれた!それって一番白人が理解しにくいところだと思うんだ!」と嬉々として。

 二人して、「白人が思っているであろう白人っぽさに最大限寄せた言葉遣いと身のこなしで”そっち側の人間”と相手に思わせることができるとたちまち態度がかわって、それまでよりも格段にいい扱いをしてもらえる」ともりあがる。

 D.B.が自分が育った街で安心して暮らせる区画と扱いがひどい区画があったという話をして、そのひどい区画がブランドンのご主人がすんでいた街だと話すと「君の主人と絶対話さないとな!あそこについては山ほど言いたいことがあるぞ!!」ともりあがると、ブランドンが「あー、でも彼は白人だから...」というとD.Bが途端に「ああ、じゃあわかんないか」という顔になり、ブランドンが「でもだからそこを訪ねていっていた私はあなたがいいたいことがよーーーーーーくわかるわ!」と。

 

で、「ようは”おれたちを殺すのやめてくれ”ってことだから」と二人の話はそこに落ち着く。

 

 もうこれだけですごくわかりやすいというか。

 このエピソードをみたトム・エリスの消耗も無理ないというか。

 これまで自分はいい人間だとおもっていたけれど、もうそうは思えないと言い、「いい人間であるということはどういうことか」ということも真剣に考え、それまで揉め事にたいして一歩ひいてまずは客観的にみて両方のサイドからものごとを考えるという姿勢だったけれども、それはほんとうに誠意ある姿勢だったのかということや、このまま黙ったままでいること自体居心地が悪くなりつつあるということ、何かしなければ、何をしたらいいんだろうと焦るいっぽうでそう思うことに潜む自分の罪悪感やそれを治したがることじたいがほんとうに彼らのことを思っての行動なのか、そういったことも掘り下げて考えたという話もしてくれる。  

 トム・エリスも最大の驚きはアメリカに住む黒人の人たちが日常的に命の危険をということだったという。

 「お金が欲しいとか仕事が欲しいとかそういうことではなく、命の危険という視点で考えたことは一度もなかった」と。それこそが自分がもつ最大の「ホワイト・プリビレッジ」なんだということが最大の気づきだったという。

 

 この二つのエピソードをみながら、私も「あの映画でのあれはこういうことだったのことか!」という気づきや、もやもやとなっていた部分に多少の手がかりがもらえた気分になったりといろいろ頭の中を整理することができた気がする。

 問題はいろいろあるけれど、まず理解するべきなことはアメリカの黒人の人たちが「いつ殺されるかもしれない」という驚異を日常的に感じているということかなと。そこをクリアするとことの深刻さがだんだんとよくみえてくる。それにまつわる精神的トラウマの深刻さも。

 

 "You don't know what you don't know until you know."

 

だなぁ、としみじみ。

 

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