So Be It

見た映画やドラマでFilmarksにない作品の感想と覚書。時にネタバレを含んでいますのでご注意ください。

Monsters and Men

 黒人が警官に射殺された事件をめぐって3人のアフリカン・アメリカンの若者の日々を描いたオムニバス。

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  BLM直球映画ではあるけれども、BLMムーブメントで困惑するのは何も端からみている私たちだけではないということが描かれていたところがこれまでみた映画と違っていてとても興味深かったです。

 

・マニーの場合

 マニーは自分の家族と妻と子供と暮らしている。ある夜、マニーは顔なじみのコンビニ店の店主ダリウスが警察に踏み込まれている場面を咄嗟にスマホで録画しているとダリウスが射殺されてしまう。マニーは就職が決まったばかりで、トラブルに巻き込まれたくはないと思ったものの、ダリウスを殺した警官が自宅付近にまできて様子を伺いにきて言外に脅してきたのをうけて、ビデオを匿名でネットにアップロードする。その日からマニーは誰かに尾行されているような気配を常に感じていたが、ある夜、ストリートで友人と話しているところを逮捕されてしまう。

 

 ・デニスの場合

 デニスは制服警官だが私服で自分の車を運転している時には制服警官に職質をかけられることも日常茶飯事である。ダリウスの事件をうけて街で若者たちによる抗議運動が活発化しはじめる。ビデオが公開されたことでニュースは人々の関心のまととなり、友人である夫妻と食事をしていても、その件について追求されるはめに。息子が警察のTシャツをきて学校に行こうとするのをみていじめられるのではないかと気をもむ。内部調査課が事件についてデニスにも調書をとりにくるが、デニスは「よく知らない」と口をつぐむ。

 

・ザイリックの場合

 ザイリックは野球でプロからスカウトをうけており、将来にむけ大きく道が広がっていた。学校からの帰り道、黒人の若者が警官から取り調べをうけている横を通り過ぎる。ザイリックもダリウスが殺されるビデオは見ていた。ある時、学校の同級生のゾーイが警察に抗議をするチラシを配っているのを見かける。ザイリックはなんとなくゾーイに手伝いたいと申し出るが、夜中に抗議運動に参加した際逮捕されそうになる。ザイリックは運良く家にたどり着くことができ、父親に「今は自分のことに集中しろ」と諭される。

 

 

 

 面倒に巻き込まれたくないという思いや、変に目をつけられたら怖いという思い、恐怖感と罪悪感のせめぎ合いなどの感情に揺れ動く様子はどのパートでもとても共感できた。

 目を背けて普通にくらしたいと思う気持ちはおなじなんだなと思って、でも完全に目を背けることができないのは、彼らの場合は「たまたま自分ではなかっただけ」という生々しさが伴うということ。

 加えて周囲の他の人種の友人たちからはBLMについて質問され、抗議運動に参加しないことでなじられたかと思えば、抗議運動に参加したことで責められたりと難しい立場に立たされるので、やはりこういった運動でもかかる負荷は黒人のひとたちの方が大きいということになる。

  これで鬱屈するなという方が無理だろう。

 令状も根拠もないのに警察から取り調べを受けたり、拘束されたり殴られたり殺されたりするのが正しいことであるはずはない。

 しかし、それがなぜかまかり通る。

  それをまかり通らせている白人から「人種差別はいけない」としたり顔で説かれる。  雇われている身であれば職を失うわけにはいかないので口をつぐむしかなくなる。

 口をつぐむことでコミュニティ内でも睨まれたり、優遇されていると槍玉にあげられる。

 白人であっても抗議運動に加担すれば、あっという間にパブリックエネミー・ナンバー1の仲間入りでコミュニティ内で疎ましがられたり、職を奪われたり暴力を振るわれたりする。

 

 この難しさと鬱々とした感じは弱者が強者に立ち向かおうとすると、どうしてつきまとうのか。

 正義感に燃えた若者は大人を変化を嫌がり行動しないと糾弾するが、大人は大人でどうすればこれ以上貴重な命を失うことなく変化をもたらすことをできるかということを懸命に考えている。

 扇動されることが一番まんまと相手の手口にのったことになる。

 相手につけこむ口実を与えてはいけない。

 世代間コミュニケーションも重要な鍵なのかと思えてきた。

 行動力と正義感という点は若者の十八番だろう。

 なによりも雇われている身分ではないこと利益の絡んだしがらみのないことから声をあげやすい。

 そのかわり、煽動され過激な方向に追い立てられていく罠にはまらないよう、やはりきっちりと語り継がれていくことも大事な気がする。

 世代間もきちんと相手に対する尊敬の気持ちを持てるようになれればいいのだけれど。たとえ意見がちがって、一時的に衝突したとしても「なぜそんなことを言い出したのか」と相手の気持ちになってみる、何かよっぽどの理由があるはずだと思えるきっかけになるのは尊敬と信頼からなのかなとか。

 具体的に何をどうすれば徐々によい方向に向かっていけるのか。

 いちばんどうにかしたいことは何なのか。

 そこもつきつめて考えていかないと。

 変化をもとめてあげた声がだんだんと怒号となってしまい、うんざりした気持ちが人々に蔓延してしまえば、何もきいてもらえないか、もしくはその反動でもっと事態が悪化してしまう場合もある。

 

 目を背けてはいけない問題だけれども、それと同時に”tread carefully”でなくてはいけないということも、ぼんやりと考えさせられた映画だった。

 

  ええ、デンゼル先生の息子さん、ジョンさん目当てでみましたとも!

 ジョンさんの人気があがれば日本でもどこかで配信されるチャンスあるかな?

  日本では公開されてないっぽいんですが...

 

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅: 84%

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