女性ラッパーのパイオニア、ロクサーヌ・シャンテの少女時代を描いた映画。
ロクサーヌ・シャンテはLL cool Jのクラッシクヒップホップ専門ラジオ Rock The Bells Radioで番組を持っている女性のMCということぐらいしか知らなかったのだけれど、この映画を見てめちゃくちゃすごい人じゃないかと驚いた。
ブルックリンの公営住宅に住むロクサーヌは母親と妹3人と暮らしている。
自分で家を持つためにコツコツと貯めていたお金を当時つきあっていた恋人に盗まれたことで母親はアルコールに逃げるようになる。、
ロクサーヌは家計をささえようと、万引きをしたりマリファナを売ったりとストリートで生活費を稼ごうとするが、ロクサーヌに道を誤って欲しくない母親との仲は険悪になっていってしまう。
そんなとき幼じみの仲間に頼まれ、リズムにのせてラップを録音したロクサーヌ。
それがラジオでかかったことで大ブレイクし、人生が大きくかわる。
16歳で突然ラップで成功の道をつかんだロクサーヌ。
本来ならこの成功はブルックリンから抜け出し、家族みんなで新しい生活に踏み出すチャンスであるはずだったのだが....。
ツアーに回っている間に仲間と仲違いしたりと成功の階段を上っていくにつれて、ロクサーヌの周囲に群がる男たちの見る目もどんどんと変わっていく。
男たちにとってもはやロクサーヌはただの近所にいる幼馴染の威勢のいい女の子ではなく、成功への切り札であったり、金ヅルだったり、欲望の対象となり、いろんな男に群がられるようになる。
次第に仲間ともギクシャクしはじめ、ギャラのことで揉めたりと散々だ。
近所で一目おかれていた年上の男と母親の反対を押し切って結婚するが、そのうち暴力を振るわれるようになり、病院に運び込まれるような重傷を負ってしまう。
今の彼女からは想像もつかない壮絶さに驚いてしまったが、それで完全に潰されてしまわなかった、このひとの強さたくましさというのはほんとうにすごいと。
幼い頃からラップバトルで周辺の男たちを打ち負かしてきたロクサーヌ・シャンテ。 パブリック・エネミーやスヌープ・ドッグ、ナズをはじめとする多くのラッパーから一目をおかれまくっていている。
ドメスティック・バイオレンスにはまり込む落とし穴や、そこから逃れるために必要なことなどにもこの映画では少しではあるが触れている。
実際はもっと凄まじかったのだろうと思うのだけれども。
兆候をどうやって見破るのか。
こういうのは本当に怖いなぁと思った。
数年前からヒップホップを正当に評価してもらおうという動きが活発化しているようだ。
ただの流行りジャンルではなく、カルチャーを築きあげた歴史をきちんと後世に伝えたいということで、大々的なイベントを行ったり、博物館を作ったりドキュメンタリーを作ったり。
ヒップホップのドキュメンタリーなどをみていると、BLMについて本当に昔から叫び続けていたのだなぁと。よくもまぁ今まで何も知らずにいたものだと自分の無知ぶりに呆れてしまう。
ヒップホップというかラップに関しては、言葉がわからないとラップは聴いてもわからないだろうというイメージしかなかったのだけれど、着目すべきは詞だけではなく実は常に新しい音やリズムを追求する音楽としてかっこいいジャンルだったんだなということが見えてきて、近頃どんどんハマっていっている。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️/5
🍅: 70%