ボブ・ディランも歌をつくって裁判のやりなおしを求めたもののやがて忘れ去られていったBlack Lives Matterムーブメント。
ボクサーのルービン・カーターがやってもいない殺人事件で終身刑3回をくらい、その間、外ではBlack Lives Matter運動が巻き起こり、様々なセレブも運動に参加し、ボブ・ディランが歌までつくって世論に訴えかけたりと盛り上がったものの、ルービン・カーターの状況を何一つ変えることができないままに忘れ去られてしまった...というくだりが映画の中にあり、本当に変えることが難しい問題なのだなと衝撃をうけ、なんだか途方にくれてしまった。
ボブ・ディランの歌ってこれかな?
警察に証拠もないのに逮捕・拘束され、そのまま裁判で有罪判決。
それを覆す機会もあたえられない。
こんなに恐ろしいことはない。
有力者が気にいるか気に入らないで運命が左右される。
今更蒸し返されたら非常に都合が悪いということで、裁判でルービン・カーターの有罪判決の無効性を証言できる人たちが既に殺されていたり、殺されたり。
なんだかもう恐ろしい。
”見ざる聞かざる言わざる”ってサバイバルのための万国共通の奥義なのかもしれないと思えてくる。
この映画ではルービンが自分の無罪を訴えた本を、大学に進学するために文字の読み方を学ぼうとしていた黒人の若者が練習用にピックアップしたことから、少年がルービンに興味を持ち、感化され直接当人に会いに行く。
このまま黙っては見過ごせないと、少年は大学に進学するための勉強をサポートするために少年をカナダに呼び寄せてサポートしてくれている白人たちに相談し、ルービンを釈放するために裁判をおこせる材料をひっしで探すことにする。
するとやっぱり彼らも命を狙われてしまい、ルービン当人がもう諦めるようにと説得したにもかかわらず、彼らは諦めなかった。
ルービンもまた自分が有罪であるとは頑として認めず抵抗を続けたけれど、たまたまルービンの乗った車を運転していたというだけでとばっちりで逮捕された運転手の人もルービンがやったと証言すれば釈放するという脅しにはついに屈しなかったところがすごい。
まずこの二人の精神力の強さに感嘆する。
正気を失うことなく、よくまぁ本当に耐え抜けたものだと。
それにしてもまたしても冤罪事件。
「何も悪いことはしていないんだから、調べればすぐに間違いだとわかるよ」 なんて、時々ドラマとかのセリフであるけれど、捕まったらもう誰もまともに調べてくれない。へたしたら、裁判もやってくれないっていんだから、捕まったらおわりだよという気分になってくる。
ここまで杜撰だと冤罪で逮捕されているのはおそらく黒人の人たちだけではないんじゃなかろうか。
ささいな勘違いで通報されて逮捕される確率が肌の色で変わるということで人種差別問題でもあるのだけれども、冤罪、不当逮捕は人権問題でもある。
(追記: “ささいな勘違い”なんて可愛らしいものではなく本当にただ歩いているだけなのに白人の人に警察に通報されたり、黒人の子供たちが遊んでいるだけにも関わらず白人の人が通報するという場面が相当数起こっていることをこれを書いた当時の私はまだよくわかっていなかった。白人の若者なら簡単な注意ですむようなケースでも黒人の若者だと前科にされてしまい、それが3回たまるとスリーストライク法で重犯罪を犯したとして刑務所行きになってしまう。両方ともそうなるのではなく肌の色で明らかに扱いが変わるということだ)
根拠なく逮捕され、有罪とされることがまかり通るのなら、言いがかりをつけるだけで逮捕できるということで。
で、うっかり余計なことを言って目をつけられたらたまらないから口をつぐんでしまう。なるべく見ないようにする。 目の前でボコ殴りにされるのを見せつけられたら誰だって怖い。 自分はああいう目にはあいたくないと思う。
こう書きながら、法律とかドラマでなんとなく知っているだけで全然詳しくないし、冤罪って人権問題にかかわると書いてあっているのかなぁと思って、この二つの単語放り込んでぐーぐった検索結果みたら余計に落ち込んだ。
なんだか全然生々しい....。
ルービン・カーターを演じていたのが我らがデンゼル・ワシントン先生。
もうまたもやめちゃくちゃカッコイイ!
かっこよかったけれど、これまたどんな気持ちで演じていたのかなぁなんて。
監督とデンゼル先生のインタビューをちょっとみたら、「人々が助け合えば、いろんなことができるって言いたかった」って、デンゼル先生の温かみがたまらないー。
監督は事件は知っていたけれども、カナダ人とルービンの本を読んだ少年がルービン釈放にかかわっていたっていうことを全然知らなくて、それを知って映画化したくなったそうだ。そしてデンゼル先生もこの映画に対してすごく大きなこだわりをもっていて、ルービン・カーター氏とあった時に「この映画はあなたについてのではなく、それ以上のこと物語る映画」って話したっていうところもデンゼル先生の覚悟すげぇみたいな。
デンゼル先生のインタビューみてよかった。
なんだか萎縮しまくっていた気持ちが膨らんだ。
やっぱりデンゼル先生はサイコーだい。
追記: この映画をみてタイリースがジョン・シングルトン監督の「Baby Boy」に出ることを決めたとインスタで書いていてビックリ!
↓そのあたりのワタシの興奮ぶりはこちら
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