とってもロマンチックなSFラブストーリー。
これまで見てきたデンゼル・ワシントン出演作品の中では一番ロマンチックな映画だったような気がする。
海軍の家族向けイベントで軍人とその家族をのせたフェリーが港をはなれた途端に爆発。543名もの犠牲者がでる。原因調査にあらわれたATFのダグ・カリーンはフェリーが爆博物によって沈められたという痕跡と証拠を即座にみつけ、これは事故ではなく大量殺人事件だと捜査チームにつげる。ダグの捜査能力を見込んだFBIの特別捜査班主任のポールはダグをホワイトスノウという最新監視システムをつかった捜査チームにダグを招く。
最新監視システム”スノーホワイト”は衛星や監視カメラなどで蓄積したデーターを元に4日と6時間前の映像を再現できる。録画することはできるが巻き戻すことも早送りすることもできない。
ダグはテロの犯人を割り出すには、爆発の犠牲者であるクレアを追うべきだといい、そこから手がかりを求めてクレアの生活を見つめる。
そのうちダグはこの映像が再現フィルムではなく実際の過去をみていることに気がつく。そして、人生で一度でいいから被害者かがでてから犯人を捕まえるのではなく、被害者が出る前に犯人を捕まえたいという思いから、4日前の自分に警告文を送るのだけれども...。
過去を変えることはできるのか?
過去を変えようとしたその行動もすでに組み込まれていて、自分が行った行為が相棒を死に追いやってしまう要因になったり、強いてはクレアが死ぬ原因になってしまうことになり、どんどんと追い詰められていくダグ。
それでもダグは諦めなくて、ついに自ら命の危険を承知で過去に飛ぶ。
ダグがどんなに犯人を追い詰めようとしても、すでに起こってしまっていることをダグが出し抜くことはできないこのもどかしさ。
こんなにこんなにダグががんばってもどれもこれもすでに時間軸に組み込まれていることで、「このままやっぱりどうしようもないのか?」とダグを思ってすっかり涙目になりながらもう最後まで目が離せない。
スノーホワイトの端末であるゴーグルをつけて片目で4日前の夜を見つつ、もう片方の目で朝の通勤ラッシュの光景をみながらダグが車を運転するというこのカーチェイスシーンはなんだかとんでもなかった!
ぜったい無理だろそれ!!!
この交通事故で死人怪我人一段と増やしちゃってんじゃないのーとハラハラしつつ。
いやでもなんかみたこともない制限のかかったカーチェイスで面白かった(トニー・スコット監督がコメンタリーでもっと面白いことができたはずだと見せ方に関して悔しがっていたのが可愛かった)
トニー・スコット監督によるとこの映画のシナリオにあった”SF要素”がすごく気に入らなかったというか懸念材料だったそうで、そこはデンゼル先生も同様だったもよう。
SF設定疑念派の二人が組んだSFということでその武骨ぶりがいい具合のエッセンスとなって、この映画を一見シリアス事件モノにみせるというかリアィティ味をだすのに一役かっていたかなという印象で、そのあたり、メイキングやコメンタリーをみるともうめちゃくちゃ楽しかった。
なかでもトニー・スコット監督のこだわりの凄さが冴え渡っていて。
フェリーの爆発シーンはなんと実際にフェリーを爆破して一切CGはつかってないとのことなのだけれど、なんと爆破シーン用にお借りしたフェリーが致命的損傷を受けないようにきちんとカバーしてから爆破し、そして綺麗に修復して返却したとか!
爆破シーンにつかったフェリーが再び乗客をのせるフェリーとして現役復帰したというのだから、なんかなんだかもういろいろとすごすぎる。
でもそれだけに爆破があって人々が海に落ちていくシーンは本当に痛ましくショッキング。
トニー・スコット監督がいっぱい撮影中のデンゼル先生の話をしてくれたのも嬉しかった。
とあるシーンでヴァル・キルマーがサングラスをかけていたから、じゃあということでデンゼル先生もサングラスをかけてそのシーンを演じたどうなのだけれど、トニー・スコット監督的には「ここでデンゼルは目でもっと多くのことを語っているいるはずだからサングラスで隠してしまったことをすごく後悔している」と話していて、なんだかめちゃくちゃ嬉しくなってしまった!
さすがトニー・スコット監督、デンゼル先生の演技力をめちゃくちゃ信頼しているー!
サングラスしたデンゼル先生もかっこいいけれど、でもやっぱり目ですごく物語る俳優さんだから、ぜひとも目は隠さないでいただきたい!(全然余談だけど「グッド・オーメンズ (Good Omens)」の何が気に入らなかったかってテナントさんにカラー・コンタクトつけさせたことだよ!もったいないー!!!)
終盤の水中シーンはスタントを使わずにデンゼル先生が水の中で演じたそうで。
「デンゼルは泳ぎがうまいから大丈夫」と監督。もうデンゼル先生について監督が話してくれると、何をきいてもニコニコしてしまう。
そういえばデンゼル先生の映画のメイキングみたのってこれがはじめてかな???(アマプラに吹き替え版しかなくていたしかたなく円盤買ったらメイキングがついていて、特典映像のありがたみに今更気がつきましたよ!!!)
「もうちょっと集中した感じでやってみてくれる?」と監督に言われて「集中してなかった?あれ?もっと集中ね!了解!」と朗らかに笑ってシーンにもどっていくデンゼル先生とか、とにかく楽しそうですっかり幸せな気持ちになってしまった。
大好きな俳優さんが信頼できる監督と共演者とスタッフと気持ち良く仕事できる現場ってやっぱりいいもんだなぁ。
実はこの映画、ニューオリンズで撮影されたのだけれど、撮影に入る前にハリケーン・カトリーナで街が壊滅的な被害にあって、スケジュール通りに撮影を開始することができなかったそうな。
撮影地をよそに移そうかという話も出たらしいのだけれど、デンゼル先生がニュー・オリンズをサポートしたいからと、撮影ができるようになるまでスケジュールを空けて、その間のギャラなど一切無しで、ニューオリンズで撮影できるようになるのを待ったとか。
ちなみにデンゼル先生は高所恐怖症なんだそうで、橋の手すりの上にのって橋の下についている付着物を採取するシーンを撮るのはすごく怖かったらしいんだけれど、意地でも誰にも悟らせなかったとか。
でも「監督のひとでなしー!!!」とこっそり車の中でしくしく泣いていたらしい...(←かわいすぎる....)
シーンの指示をするとき、トニー・スコット監督はあっさり誰の介添えもなくあそこに登って立ってたもんな...。デンゼル先生も怖いなんて口が裂けても言えまい....。
監視システムやタイムマシンについてめちゃくちゃ懐疑的だったデンゼル先生を監督とジェリー・ブラッカイマー二人掛かりで説明し「大丈夫だからー!!!」と必死で説得したそうな。(←図を思い浮かべて笑ってしまう。デンゼル先生がどんな顔して”OK"といったのかも想像できてしまって笑える)
トニー・スコット監督とリドリー・スコット監督と同じ年に仕事をしたことになったデンゼル先生。
どっちも自分のやりたいことがわかっている監督と前置いてから、「トニー・スコット監督の方が一段とアーティストっぽい」と。「よくストーリーボードを描くし、リドリーも描くと思うけどぼくは見たことないんだ」とも。「リドリー監督はどっちかっていうとその時に何が起こっているかってことに集中して、それを調整していく感じかな。ぼくはトニーの方が好き。3回も仕事しているし、これからもいっぱい一緒に仕事をしたいよ」と話していた。
あと、同じインタビューの中で「これまで映画の仕事の中でプレッシャーを感じたことはありますか?」と尋ねられ、「プレッシャーねぇ...」とちょっと考えてから「あ、”マルコムX”演じた時」と答えて、インタビュアの人に「周囲の期待が大きかったからですか?」と尋ねられ、「ううん。殺すぞっていっぱい脅しの電話とか手紙受け取ったから。"Cry Freedom" の時もさんざん殺すぞって脅し受けたんだけど....。あれはプレッシャーだったかな。あと予算が大きな映画の時もまぁちょっとはプレッシャーかなぁ...」って、そんな脅迫受けてたんですね....デンゼル先生....。
"Cry Freedom"、そんな脅し受けつつ時差ぼけ乗り越え映画とドラマをかけもちしながら撮影に向かっていたんですね(涙)。
デンゼル先生、飄々とかっこよすぎる......
私の好み度:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅:55%