スタン・リー御大が画面に登場してなんだか目頭が熱くなってしまった。
マーベル初のアフリカ人ヒーロー。
ワカンダ・ふぉーえばあああああああ!!!
「ランタンマン」、 「ワンダー・ウーマン」、「アクアマン」とことごとく寝落ちしてしまったので、ちょっとヒーローものをみる勇気がなかったのですが(...って、冷静に考えたら寝落ちたのDC系だな💧)、チャドウィック・ボーズマンの波が押し寄せてきているいま、彼が画面に出現してくれるなら何ら恐れるものはないのである!
なんて思って、見てみましたがー....。
お、思いの外、複雑な気持ちになってしまった。
「Love Jacked」でも気になったのだけどアメリカ人が思い描くアフリカと現実のアフリカとはどう考えたってズレがあるのではないだろうか。
そもそもアフリカといってもあの大陸には今では54カ国も独立国があるのだし。
例えばハリウッド映画や海外ドラマに日本が登場した時、「外国人がイメージする日本」という描き方になってしまっていて、怪しげな日本語のポスターや町並み、字幕を出してくれないとききとれない日本語の発音が気になって本編に集中しきれなかったという経験は誰にでもあると思う。
これってアフリカの方がみたらどんな感じなのかなぁ....とそんなことも気になったりしつつのワカンダー・フォエバー。
ワカンダというアフリカ大陸に極秘に存在する架空の国が舞台。
あのアフリカン・アクセント(?)な英語やワカンダ語(←オリジナルでつくったのかな?)は当のアフリカの人たちにはどう聞こえるんだろうという好奇心がわいてしまった。
ちょっとwikiをみてみたらアフリカにはなんと2100〜3000種類の言語があるらしい!(←ひゃー!!!)。厳密にどの言語のアクセント混ざりの英語になっているかとか特定するのはおれにはまず無理だ。
ワカンダ・フォーエバーは架空の国なのでこの映画に関してはワカンダ語のアクセント混ざりの英語を話しているといえばいいのかな。
チャドウィック・ボーズマンことチャド兄のアフリカン・アクセントを私が耳にするのはこれで二度目。
チャド兄は「Message from the King」でもちょっと違う言語の音が混ざった英語で話していて、なんか独特だなぁって最初感じて、で、だんだん耳に心地よくなってきていたんですね。だから、この映画でまたチャド兄の他の言語の音な感じの英語をきけたのはとっても嬉しかったわけですよ!
「Message from the King」ではチャド兄は南アフリカ人の役。南アフリカの公用語は11言語あって、一応英語もその一つではあるからチャド兄は南アフリカ英語が持つ音によせて発音していたことになるわけだから、聞き比べてみれば、ティ・チャラとキングでまたちょっと変えてきている可能性もあるかな。
チャド兄の役作りへのこだわりぶりを考えればありそう!
また時間のある時に確認してみよう。
で、複雑な気持ちになったというか、もやもやっとしてしまったところは、ワカンダが立派だとされる根拠が豊富な資源と進んだテクノロジーに裏付けされた圧倒的軍事力であるっぽいのが気になったというか。
圧倒的技術力と武力というスタンスはまぁアメリカの十八番だし、マーベルはアメリカのヒーローを描いているわけだから、そういう結論になるのは不思議はないのかもしれないけれど。
それだと今までと何も変わらないというか、つまるところWhite Saviorと発想は同じではないかと。
あ、でもそこがポイントなのかな。
アメリカの黒人の人たちにはアフリカの人たちにも自分たちの窮状を見て助けてほしいという思いがずっとあったということなのかな????ってだんだん気になってきて...(無理やり故郷から引き離され連れてこられたのだから考えてみれば拉致被害者ということになるのか....)
ティ・チャラが支援センターをアメリカにつくったところをみると、そういう気持ちがやっぱりいまもあるのかな???
でもアメリカにいる黒人の人たちのルーツが全員アフリカとは言い切れないという話をきいてしまってから考えると、これまたなにやら複雑な....。
400年前に無理やりアフリカ大陸からアメリカ大陸に奴隷として連れてこられた人たちの子孫ということで、ルーツを調べたくとも多くの場合番号でしか記録が残っていないから、所有者がわかるのが精一杯。
その所有者がどの商人から奴隷を購入し、その商人がどこから奴隷を仕入れ、その仕入れ先がどこから奴隷を調達したのかたどる術がないなら、自分のルーツをピンポイントで知ることはできないとか。そこからわかる唯一確実なことはアフリカ大陸から連れてこられたということだけ。
南北戦争の映画をみていると、自由だといって放り出されるだけで、そのためのガイダンスというか、あとのケアがどうだったのか全然わからないなぁなんて不思議になってきて。
映画では象徴的に描かれているだけで、実際には故郷に帰るかそのままとどまるかみたいな選択権みたいなのがちゃんとあったのかしらとか。
賠償金とか、当座の生活資金とか。お金もなく放り出されて、身分を証明するものも保証するものもない感じで、そのせいで仕事もできないとかだったら、相当どないせーっちゅーねんって感じで途方に暮れただろうなぁと。
アメリカでは未だに不当に扱われ続け、奴隷時代と変わらない手順で法的機関に罰せられたり殺されたりすることもあって、そんな日々を送っていたらアフリカのどこかにあるはずの故郷なら、肌の色が違うというだけでこんな目にあうことはないのかもしれないというブラック・アメリカンの切なる願いというか夢が「ワカンダ」なのかなぁなんて。
そしたら、どんな侵略者にも踏みにじられることのない強い国という設定もわかるかな。どんな国にも頼らずに自国内の資源だけで余裕でやっていける。もう搾取されたくないし、そんな横暴は許さないーみたいな。
ただ西洋の洗礼を受けた目でみればワカンダは素晴らしい国として受け入れられるのかもしれないけれど、西洋にこっぴどい目にあわせれてきたアフリカの人たちからみれば「ワカンダ」はどう映るのかなぁと。
わたし的には圧倒的強い武力というのがやっぱりちょっと怖いって感じてしまって。
「強い兵器がある=めっちゃ安心」という感覚はいまいちピンとこない。
だってそんなものがあったらいつ矛先がこっちにむくかわかんないじゃーんって、それで怖くなるんだけど、それは私が怖がりだからなのかな?
前王の弟の息子がアメリカのストリートで育ち、やがてCIAの工作員であり政府の殺し屋としてあちこちの国を転覆させてきたという身の上をもっていて、ワカンダに彼がはいったことでワカンダの内紛につながったというながれにはなんだか、アメリカの黒人さんたちのジレンマを感じてしまった。
アメリカ軍としてアメリカの黒人の人たちは大勢戦場にいってるわけだから。
アメリカのために命をかけて戦って、アメリカに戻ったら相変わらず肌の色で全て判断されてしまう感じで。
自分たちもアメリカに苦しめられているのにアメリカ人として糾弾されたり憎まれてしまうのは何か割りに合わないような。(帰還兵の人たちが社会復帰するのに大変な苦労をしているのはなにも黒人の方だけではないのかもしれませんが...でもだったらむしろ帰還兵の人たちが帰ってきてからの方が悲惨な目にあわないといけない社会の方がおかしいということになりますよね???)
そんな思いをさせてしまったのは前王の弟の息子を自分の父親がアメリカに置き去りにしてしまったせいとティ・チャラは心を痛め、アメリカのオークランドに支援センターをつくることにする。
でも今後ティ・チャラ王子が警官の過剰暴力で殺されてしまう人々のことを知ったら大変なことにならないかしら。
BLMデモ行進に参加するだけではすまなくなりそうな。
BLMのデモ行進で警官に暴力を振るわれたのは実は黒人の人たちだけではなくて、デモ行進に参加した白人の人たちも警官から暴力を振るわれていて、先日もデモ行進している時に黒人の人が警官に暴力を振るわれそうになったのを庇って意識不明の重傷を負った白人の若者の話をSNSのTLで見かけましたが。
デモ行進に参加していた白人のおじいさんが警官につきとばされて道路に後ろ向きに転倒して後頭部をうち、血を流しているのに警官の人たちは様子をみることもなく通りすぎていっていうようなこともありました。
そういうのをみて、白人の人たちでもデモ行進したらひどい目にあうんだ...と驚いたというか。黒人の人たちならひどいめにあっていいということではなくて、肌の色関係なくひどいめにあっているということに驚いたんです。
でも、そういえばこれまで見た人種差別に関する映画の中でも白人の人たちが黒人の味方をしようとしたらとんでもなくひどい目にあわされたり命を狙われたりしているなぁと思い出してみたり。
「評決のとき」でもマシュー・マコノヒー演じる弁護士さんが家を燃やされたり、「セルマ」でもキング牧師に賛同してかけつけた白人の神父さんが殺されたりしていたなぁと。
今回のBLMが大きく違ったのは、自由の国アメリカで、その主張だけで警官に暴力を振るわれたり、殺されたているという現実がいまだに起こっていることを多くの人が目撃したからっていうのがやっぱり大きいのかな。
「ブラックパンサー」の続編では、この違法行為をそのまま放置すれば民主主義の危機だぞということで、ティ・チャラ王子というかが立ち上がったりするのかしら?
ブラックパンサーとして人々を守ろうとして逮捕されて、ろくに証拠もないのに終身刑とか言い渡されて刑務所におくられてーなんて話だったりして。で、みんなでティ・チャラ王子の釈放をもとめる抗議運動をするみたいな???
そんなのマーベルでやる必要あるの???という気もするけれど、でも、でもこの映画のラストでブラックパンサーはブラック・アメリカンの救済に乗り出すことにしたのだから、BLMは避けられないような。
スタークさんはもういなくなっちゃったから、かわりにピーター・パーカーが上告するための証拠を探しにがんばってくれる感じで。ブルックリンの子だもん。BLMのプラカードもって行進する派であることは間違いあるまい。
スーパー・パワーを持ちながらスーパー・パワーに頼らない戦い。
地味そう。
でも変身しないほうがチャド兄やトム・ホランドのお顔もたっぷりみられてる嬉しい!うん。(全身タイツはやっぱりなんだか気恥ずかしいよ)
あとはー、ヴィブラニウムが世界に拡散したら大変なことになるっていう一大事なのにアベンジャーズの他のメンバーに相談できなかったのが残念だったかなぁ。
みんなアメリカ人だからアメリカ人は信用できない...?
キャプテン・アメリカやスタークさんに心開けなくても政府から不当なめにあいまくってきていたハルクなら大丈夫なんじゃない?
あ、ソーがいるじゃん!
ソーなら神様だから国家間の心配とかいらなさそうだし、相談すればよかったのに....。
「アメリカ人だから!」と頼れるアメリカ人代表として登場していたCIA捜査官のエベットさんが、マーティン・フリーマンさん。でも「アメリカ人だから!」と言われるたんびに、この人英国人なんで...と合いの手をいてたくなるというか。
いやべつに英国人がアメリカ人としてハリウッド映画に登場するのは毎度のことなんでかまわないというか、その方が簡単に見られるという確率も高まり、嬉しくもあるのですが。この配役ってもしかしたら英国人俳優を使うことで”英国人俳優キャラは悪役”という配役あるあるでティ・チャラが裏切られるかもしれないというハラハラ感を煽ったとか??? ←疑いすぎ。
wikiによると2018年に北米で一番興行成績がよかったスーパーヒーローもの映画になったとか。これで有色人種が主人公の映画は客が入らないというハリウッドのお偉いさんの説はくつがえされたわけで(「ワイスピ」も実証してきたわけだし)。
でもきっと「客がはいらないから」というのは建前の理由でしかないんだろうなぁ。
追記:
先日みつけた「イコライザー2」のインタビューの中でデンゼル先生が「最近泣いた映画は?」ときかれて「ブラックパンサー」と答えていたのが印象的で。
40年間この業界にいてようやくここにたどり着いたのかと思うと色々感慨深くて涙がでたって。デンゼル先生は全然口にしないけれど、謂れのない差別でいっぱい辛い思いや悔しい思いもしたんだろうなって。
で、そのあとでチャド兄のデンゼル先生の存在がなければ「ブラックパンサー」はなかったっていうスピーチを見て、それをきいたデンゼル先生がグッときているのをみて、またもやこっちもグッときてしまった。
チャド兄はデンゼル先生がイギリスの演劇学校に行く資金を出してくれたと知って、ずーっとそれを心の支えに、なかなかオーディションに受からなかったりしても、デンゼル・ワシントンが自分に可能性をみてくれたんだというその思いでがんばったってインタビューとかでよく話していて。
なんというかあらためてデンゼル先生がハリウッドの第一線で映画に出続けたことで「いつか僕もデンゼル・ワシントンみたいな映画スターになるんだ!」って黒人の子供達にいっぱい夢をあたえたし勇気をあたえてきたんだなぁとグッと。
チャド兄はBLMについても果敢に発信しているので、デンゼル先生のように自分も自分の後に続いてくる未来の俳優たちのために少しでも道を切り開く、状況をよくするために全力を尽くすんだろうなぁと感じて。
今よりもずーっとBLMについて無理解な白人優位のハリウッドでデンゼル先生は黙々と自分にできることを全力でやってきて、本当は悔しいことや辛いこともいっぱいあったはずだろうに、なんというかそういうことはもう全然感じさせないデンゼル先生はやっぱりすごくかっこいいなあって。
道を見誤ることなく本当の意味で思いやりがあって誠実な人であり続けられるっていちばんつよくてかっこいいなぁって。
簡単そうで全然簡単なことじゃないって、先が見えにくいと余計に思っちゃう。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️/5
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