なんと複雑怪奇な
デンゼル先生出演作品攻略一環での視聴でしたけれども、いやしかしこれ....これさぁ....。
そもそも軍隊というところが”死にたくない”という生物の本能を捻じ曲げてどんな状況下においても上官の命令に条件反射的に従えるようになるよう訓練するところだから、せっかく奴隷の状態から逃げ出した黒人のみなさんが次々と志願していく様子がまずとても複雑な気持ちがして。
そして訓練となると、死なないためにも厳しい訓練は必要なのだけれども、同じ白人同士で訓練するのとはわけがちがうような...せめて同じ黒人の訓練官ならましかもと思いながらも、そもそも軍のありかたとか訓練方法とかも西洋式しか知らないわけだから、この厳しくとことんまでというやり方が最適なやり方なのかどうかもよくわからないなぁなんてことも。
というか、「炎の英雄シャープ」という英国ドラマで知ったことでしかないけれども、19世紀の当時イギリスでは将校には貴族しかなれず、貴族でなければ一兵卒、出世しても確か軍曹までだったような...?(←うろ覚え)。
「炎の英雄シャープ」では孤児だったリチャード・シャープが将校に出世してナポレオン戦争を生き延びていくという話だったけれど、もう本当に貴族でないってことで辛酸をなめまくり。あのドラマでのシャープが率いていたライフル連隊や歩兵部隊の一兵卒の消耗品扱いぶりの生半可なさぶりを思い出せば、この54連隊のあと大勢の黒人の方が軍に志願したという話をきくとどうにも複雑な気分にならざるを得ない。
映画の中でもなかなか必要な物資が供給されなかったり、黒人兵士の給料が白人兵士よりも低い額で給付されるなど幸先が悪すぎるというか。
最初は武器を持たせることで反乱を恐れたのかもしれないけれど、そのうち激戦地などに白人兵士よりも優先的に送られたりするようになるのだろうなぁという未来もみえて気持ちが重くなる。
映画の中で白人さんたちが自分たちを奴隷身分から解放するために命をかけて戦ってくれているのだからと自らも戦いに身を投じようというセリフもあったけれど、白人さんたちの目的って本当にそうだったのかなー??って。
戦いに身を投じた黒人さんたちも自分たちの自由のための戦いならばその思いは報われるけれど現代まで終わることのない差別の歴史を思うとなんとも言えない気分になる。
戦わないことには奴隷解放もなかったのも事実だろうけれど、そもそも白人さんたちが黒人さんたちの自由を得るために自らの命を捨てて戦ったのだとすれば、その後の差別なんて消えてなければおかしいんじゃないかとか。
消えていないということは、それだけじゃない戦いだったってことなんじゃないのかとか...。
デンゼル先生が演じたトリップが的を得たことを言っていた。
ーl mean, what's the point? Nobody'll win. lt'll just go on and on.
それでもトリップはこの黒人部隊を率いたロバートが心から黒人の地位向上に心砕いてくれているのを感じたからこそ、あの瞬間、旗を持ったのだと思うけれども。
ここでもデンゼル先生のカリスマ性は光りまくっていて。 あの瞬間、この戦いで自由を勝ち取るんだという高揚感が一瞬わきあがって。
でもだからこそ、余計に哀しくなる。
戦争なんてどんな大義名分かかげてたって最前線で戦う兵士やその家族にとっちゃ最悪だ。
やらないにこしたことはない。
-Trip, isn't it?
- Yes, sir.
- You fought very well yesterday, Trip. Sergeant Rawlins has recommended that you receive a commendation.
- Yes, sir?
- Yes. And l think you should bear the regimental colours.
- No.
- lt's considered quite an honour. Why not?
- Well, l'm......wanting to say something, sir. But l...
- Go ahead.
- All right. See......l ain't fighting this war......for you, sir.
- l see.
- l mean, what's the point? Nobody'll win. lt'll just go on and on.
- Can't go on forever.
- Yeah, but ain't nobody gonna win.
- Somebody's gonna win.
- Who?l mean, you...You get to go on back to Bostonin a big house and all that. What about us? What do we get?
- Well, you won't get anything if we lose. What do you want to do?
- l don't know, sir.
- Stinks, l suppose.
- Yeah. Stinks bad. And we all covered up in it too. l mean, ain't nobody clean, sir. Be nice to get clean, though.
- How do we do that?
- We ante up and kick in, sir. But l still don't want to carry your flag.
この映画についてデンゼル先生はどう感じていたのだろうということが気になってインタビューを探してみた。
Bobbie Wygant Interviews Denzel Washington for "Glory" 1989 from EC Films on Vimeo.
デンゼル先生はこの映画の話がくるまで南北戦争で戦った黒人部隊がいたということを全く知らなかったそうだ。学校では教わらなかったと思う、と。
トリップの背中に鞭の痕をつけるというのもデンゼル先生のアイデアだったそう。
グローリーの撮影のとき、かつて奴隷がいれられていたという倉庫をみたそうな。
壁には鎖が繋がれていたという釘がいくつも残っていて、デンゼル先生はそれを一本抜いて持ち帰り、いまも家においているそうだ。
私の好み度: ⭐️⭐️/5
🍅: 93%