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「ワイルド・スピード」シリーズと「マルチ・エスニック」を考える - 其の三

今回は「ワイルド・スピード X2 (2 Fast 2 Furioius)」でジョン・シングルトン監督が召喚された経緯はどうだったのかを見ていきたいと思う。

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・ジョン・シングルトンが監督となった経緯

 ジョン・シングルトン監督の話ではタイリース・ギブソン主演の監督作品「Baby Boy」のプレミアで当時ユニバーサルの取締役ステイシー・スナイダーが「タイリース・ギブソンでまた何か作品を作りましょう!」と話しかけてきたことがそもそもの始まりだったそうだ。

 後日、ジョン・シングルトン監督のもとにステイシー・スナイダーから電話がかかってくる。「もしもヴィン・ディーゼルが”ワイルド・スピード”の続編を断ったらタイリースを推そうと考えているんだけど、どう思う?」と尋ねられたそうだ。相手がタイリースの俳優としてのポテンシャルを知りたいのだなと察したシングルトン監督は「タイリースなら大スターになるよ」と答える。するとステイシー・スナイダーがさらに「もしタイリースが出演を承諾したら、監督をやってくれるかしら?」と尋ねてきたのでジョン・シングルトン監督はOKしたそうだ。

 この頃のジョン・シングルトン監督はLAのストリートの厳しい現実を描いた「Boyz in the food」,「Higher Learning」, 「Baby Boy」の3部作を撮り終え、少し息抜きをしたいと思っていたところだったという。

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 気のあう仲間とバカンス楽しんでギャラもらったって感じと監督とキャストが口を揃えていうぐらいなので2作目が最高に楽しい撮影期間だったことは疑いない。

 すでに何度も書いてきていることなので彼らの仲良しぶりはいくらでも書きたいところだけれど、ここではグッと我慢して先に進むことにする。

 しかし、楽しい撮影の裏で、ジョン・シングルトン監督はスタジオ側とひっそりと過酷な戦いを強いられていたようなのだ。

 シングルトン監督によると、スタジオ側から理由もなく第一助監督をクビにしろといわれたらしい。この助監督はジョン・シングルトン監督が他の映画でも一緒に仕事したこともあり監督が信頼している人物で、監督がスタジオ側に解雇する理由がないというと、スタジオ側が他の関係者から悪い評判をきくと説明。その関係者と直接話しがしたいと監督が言っても誰から苦情が出たのか具体的なことはまったく教えてもえらえなかった。

 最初は抵抗したシングルトン監督だが、するとスタジオ側は70日と予定していた撮影を56日で切り上げるよう突然通告してきたらしい。今更予定をくり上げるのは不可能といってもスタジオはきかなかったらしい。最終的に第1助監督が「自分がやめるから撮影日は70日のままで」と身を犠牲にして撮影期間を守ってくれたということだ。

 その第1助監督の空席を埋めたのはスタジオ側がつれてきた人物だ。シングルトン監督の見立てでは仕事の能力に差はなく、唯一の違いはやめた彼が黒人でスタジオが連れてきた人物が白人だったことだけだったと監督は語っている。

  

 しかし、スタジオ側がそんなに白人のスタッフを推したいのであれば、そもそも、ジョン・シングルトン監督を2作目の監督になぜ召喚したのかという疑問がわく。

 ジョン・シングルトン監督が積極的に黒人の人たちを採用するのは最初からわかっていたことだろうに。

 誰を監督にするかなどスタッフの人事についてはキャストの力の及ぶところではないだろう。となると、ここで気になってくるのがプロデューサーのニール・モリッツの存在だ。  

 ニール・モリッツは1作目から今日に至るまで「ワイルド・スピード」シリーズに関わり続けている。  

    2作目でジョン・シングルトン監督、3作目にジャスティン・リン監督を召喚したのがニール・モリッツなら、もしや、そもそも1作目のマルチ・エスニックなキャスティングを成功させたのもニール・モリッツということなのだろうか?

 そう思うと、なんだか俄然このニール・モリッツという人物に興味が出てきた。 

 

・B級映画のサラブレッド、ニール・H・モリッツ

 というわけで軽く調べてみると、このニール・H・モリッツという人はなかなか興味深い履歴の持ち主の人だった。

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 ニール・モリッツは大学時代に20ヵ国渡り歩いた経験を持つ。

 中国に行った時に子供たちが持っているキャンパス地のスクールバックが漢字が書いてあったりしてかっこいいなーと思って友達や家族のお土産として幾つか買ってかえる。すると思いの外評判がよく「どこで買えるの?」と聞かれまくった。「これ案外、いけんじゃね?」と思ったニール・モリッツは友人とこれを輸入して売ってみることにしたそうな。

 3年後、結構大きな会社になっていて、これを一生の職業にする気はないしなぁと売ることにしたと。するとラッキーなことにかなりいい値段で買ってもらえたので、その資金で映画をつくることにしたということだ。

 というのも大学を卒業して映画スタジオに就職しようにも当時募集がなかったらしく、どうせ自分は独身だし、会社を売ったおかげで2年ぐらいは持ちこたえられる十分な資金もあった。それでやってみようと決めたらしい。

 そこで大学の時に知り合った、商業的にヒットしそうな作品のアイデアが豊富そうな才能豊かな若手のライターと才能はすごくあるけれど商業的にヒットしそうにないアイデアが豊富な才能あるライターと組み映画作りをはじめていく。

 ニール・モリッツの祖父はB級映画の帝王とよばれるロジャー・コーエンの映画会社アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズの投資者で、系列の映画館のオーナーでもあった。そのため映画館に上映する作品を選別するため毎夜のごとく家でB級映画がかかっていたらしい。おかげでニール・モリッツは子供の時からB級映画を浴びるように見ており、B級映画が大好きでたまらなかったらしい。

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 自分が映画業界にはいってから1年半経過した頃、不況のせいで小さな映画会社やインディーズの映画会社がどんどん潰れていき、数年前だったら製作にGOサインが出たような映画が軒並みキャンセルされたり上映される映画や作品の傾向が大手映画会社の思うがままになっていくのが腹立たしくてたまらなかったということも自分で映画作りをはじめてみようと思った動機だったようだ。

 なるほど、そうなってくるとジョン・シングルトン監督、ジャスティン・リン監督という社会派な映画監督チョイスもこの人ならありえるかなと。

 

 ジョン・シングルトン監督に声をかけたユニバーサルのステイシー・スナイダーとニール・モリッツ。推測でしかないが、この2人の連携が鍵だったのではないかと思う。↓

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 「ワイルド・スピード X2」のプレミアにステイシー・スナイダーは姿を現している。ジョン・シングルトン監督とタイリース・ギブソンを召喚したのは彼女だからなんの不思議もない。

 実はこのステイシー・スナイダーは1作目のプレミアにも出席している。

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 ↑ この親しげな様子からするとヴィン・ディーゼルをこのシリーズに連れてくるというアイデアは彼女のものだったのかもしれない。

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 さらに2004年の「リディック(The Chronicles of Riddick)」のプレミアにも彼女は登場しているので、ヴィン・ディーゼルをサポートくれた人の一人と思って間違いなさそうだ。

 ちなみにヴィン・ディーゼルという人はマルチ・エスニックの申し子のような人で、黒人としては白人っぽすぎる、白人としては黒人っぽすぎるという難儀な理由でなかなか役に恵まれなかった背景を持っている。業を煮やして自分で映画を作ったくらいだ。

 タイリース・ギブソンに目をつけていたように、ヴィン・ディーゼルのこともステイシー・スナイダー、ニール・モリッツがずっと着目していたのかもしれない。

 ちなみに「ワイルド・スピード X2」のプレミアの時、ステイシー・スナイダーはリュダクリスやジョン・シングルトン監督と写っているけれどもポール・ウォーカーと写っている写真は1作目、2作目どちらにも見当たらない。なんでだろう...。

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 まぁ、Gettyさんしかみてないせいかもしれないし、たまたまかもしれない。

 

 ステイシー・スナイダーさんがジョン・シングルトン監督に声をかけた「Baby Boy」のプレミアは2001年6月21日。

 「ワイルド・スピード」のプレミアが2001年6月6日に公開。

 ステイシーさんがジョン・シングルトン監督に声をかけた時点ですでにヴィン・ディーゼルが次に出ないことが濃厚だったという可能性はあるだろうか?

 2作目の発注がどの時点で行われたのかはわからないし、ヴィン・ディーゼルや他のキャストが出演しないことが確定したのがいつなのかもよくわからない。

 わからないが、ポール・ウォーカーだけは契約があるから2作目があれば出るというのは揺るぎようのない予定というか確定事項なわけで。

 しかし、ジョン・シングルトン監督というのはむしろタイリース・ギブソン寄せでお膳立てされいるような...。

 タイリースのことだからステイシー・スナイダーに声をかけられた時にジョン・シングルトン監督と一緒だったらやるぐらいのことは言ってそうな気がするし...。

あれれ???

 

ちょっとこんぐらがってきたのでまた今度。

 

 ・ジョン・シングルトン監督作品感想

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