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見た映画の感想。ネタバレを含んでいますのでご注意ください。

「ワイルド・スピード」シリーズと「マルチ・エスニック」を考える - 其のニ

 「ワイルド・スピード」シリーズのキーパーソンとして真っ先に思いつくのがやはりジャスティン・リン監督だろう。

 この人を抜きにして「ワイルド・スピード」の快進撃はありえない。 

 

・ジャスティン・リンという反骨

 3作目で監督として召喚され、その後、4作目、5作目、6作目と監督。そして来年の4月に公開されることとなった最新作9作目の監督であり、ファイナルと噂される10作目もジャスティン・リン監督で決定している。

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 ジャスティン・リンが「ワイルド・スピード」シリーズ 3作目のオファーを受けたのは2004年「アナポリス/青春の誓い(Annapolis)」の撮影をしていた時のことだ。

 ジャスティンはオファーされても「自分が撮りたい類の映画ではない」という理由で断り続けていた。薄っぺらなポップコーン・ムービーよりも何かしら意味のある映画をとりたいというのがジャスティンが思い描く自分の映画監督としてのキャリアだったからだ。それにオファーの際に送られてきた脚本も気に入らなかった。「ぼくが気にしすぎなだけかもしれないけれど、アジア系が侮辱されているように感じたんだ」とジャスティン。

 撮影現場に電話がかかってきて、そのことで何やら怒っているジャスティンを傍で見ていたのが、「アナポリス」に教官役で出演していたタイリース・ギブソンだ。

 ジャスティンが断ったのが「ワイルド・スピード」の3作目と知ったタイリースは「あんなポップコーン・ムービーはぼくの撮りたい映画じゃない」と憤慨しているジャスティンに自分が「ワイルド・スピード X2」で経験したことを話し、それから「The Fast and The Furious - Directer by Justin Lin」と書いた紙を渡した。それを見たジャスティンはまんざらでもないという顔をしたらしい。

   ちなみにこの時、ジャスティンが受け取った脚本というのはあのクリス・モーガンが書いたものである。

 ・クリス・モーガンと「ワイルド・スピード」

 そもそもどうしてクリス・モーガンが「ワイルド・スピード」のシナリオを書くことになったのか。

 答えは簡単。クリス・モーガンは「ワイルド・スピード」シリーズの3作目のシナリオを書けるライターの募集広告を見つけ応募したのだ。  

 面接のためにクリス・モーガンが用意したのが「ドミニク・トレットが日本でドリフトを習得する」というアイデア。

 クリス・モーガンは日本の若者たちの間でドリフトが走行が流行っていると動画などの資料をみせ、「ドムの大切な誰かが日本で殺されたため、その殺人事件を解決するためにドムは日本にいき、そして事件の謎を解くためにドリフトを習得しなければならなくなる」とプレゼンする。

 「残念ながら今回は規模の小さい映画を考えていて、予算も低いのでヴィン・ディーゼルを呼ぶことはできないからドミニクがメインの話は無理だと思う」と言われてその時は採用されることもなく面接は終わった。

 ところが、それから1週間半後ぐらいに「この間話していたのってなんだっけ?? ドリフトとかなんとかっていってた? もう一度その話しを聞かせてくれないか?」とスタジオに呼ばれることになる。

 クリス・モーガンがスタジオを訪れ説明すると「それを高校生をメインにできるか?」と尋ねられたそうだ。自分に高校生の話がかけるとは思えないなぁとクリス・モーガンが戸惑っていると、高校生メインというのは忘れてとりあえずドミニク・トレットをメインとした脚本を書いてみてくれと正式に雇われることに。

 クリス・モーガンはまず「ドミニク・トレット」メインのシナリオを書き上げて提出する。すると今度はそれを高校生になおすようにとメモがついて戻って来た。クリス・モーガンは高校生をメインの話に書き直し、それが「Tokyo Drift」の脚本となったそうだ。

・「Tokyo Drift」にハンを書き加えたのはジャスティン

 監督を引き受けたジャスティンは「Tokyo Drift」で「Better Luck Tomorrow」の続編をやることを思いつく。

「Better Luck Tomorrow」は4人のアジア系アメリカ人の成績優秀な高校生が主人公で彼らが小遣い稼ぎという軽い気持ちで軽犯罪に手をだし、頭がいいがゆえに周囲の目をうまく欺きながらしだいに深みにはまっていくというコメディだ。

 ジャスティンはファンから主人公の4人があの後どうなったのかしょっちゅう尋ねられていたのでハンを出すことを思いついたという。

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 しかし、当然のことながらクリス・モーガンが書いた脚本にハンは存在しない。ハンを出演させるためには脚本に書き加える必要がある。

 そこでジャスティンは新しいキャラクターとしてハンを付け加えて脚本を書き直すことをスタジオに認めさせるために一計を案じた。  

  オーディションの前夜にジャスティンから電話がかかってきたとサン・カンは当時のインタビューで話している。

 主人公ショーンのセリフとファレルという黒人のキャラクターのセリフ両方できるよう準備しておくように言われてサン・カンは戸惑ったそうだ。

 ファレルというのはクリス・モーガンの書いた脚本にあった黒人のキャラクターで登場シーンは少ないもののいつも美女と一緒にいてどんでもなくカッコいいという設定なキャラクターでらる。ジャスティンの意図はわからないものの、とりあえず言われた通りに準備をして本番に臨むことにした。

 オーディションでジャスティンはサン・カンにショーンのセリフを読むようにいう。評価はとてもよかった。しかしスタジオ側は主人公は白人を考えているのでと、サン・カンに主人公のメインの敵役として準備しておくよう告げる。  

 そこでジャスティンは「今度はファレルのセリフを読んでみて」と言われ、サン・カンは「こんな役をアジア系の俳優にこなせるわけがないだろう」という空気もあからさまなスタジオ側を納得させる演技をみせる。そのおかげで、ジャスティンはサン・カンのために新しいキャラクターを脚本に書き加える許可をスタジオ側から得ることができた (ちなみにジャスティンはハンの物語を「Tokyo Drift」に組み入れるためにジャスティンは友人のライター、アルフレッド・ボテーロ(Alfredo Botello )にリライトを手伝ってもらっている)。

 ジャスティンはハンを付け加えた脚本を書き上げながら「ワイルド・スピード」シリーズの幕を綺麗に下ろすためにもドミニクとハンに接点を持たせたいと考えた。スタジオ側からヴィン・ディーゼルを説得するのは無理だとさんざん言われものの、ジャスティンは当たって砕けろ精神で2005年のある夜、ユニバーサルの幹部の1人に伴われてヴィン・ディーゼルの自宅を訪ねる。  

 ・ヴィン・ディーゼルとジャスティン・リンの出会い

 会うなりヴィン・ディーゼルはジャスティンにいきなり「ダンジョンズ & ドラゴンズ 」の本を見せたらしい。「ダンジョンズ & ドラゴンズ 」が大好きだったジャスティンはすぐに食いつき、映画の話はそっちのけでその話で盛り上がったそうだ。

 その後、ジャスティンはハンとドミニクの物語をひたすら説明。気がつけば4時間ほど話し込んでいたという。その時すでにジャスティンは「ワイルド・スピード Euro Mission (Furious 6)」に含まれるようなことまでヴィン・ディーゼルに語っていたというから驚きだ。

 もちろんこの時のジャスティンは続編の可能性などまったく考えていなかったし、「ワイルド・スピード」」を撮るのも「Tokyo Drift」一本きりと心に決めていた。自分の趣旨とは違うポップコーン・ムービーに必要以上に関わるつもりなど当時のジャスティンには微塵もなかった。

  その後、「Tokyo Drift」のラフカットをみたヴィン・ディーゼルはカメオ出演を承諾する。撮影したものをみて、ヴィン・ディーゼルがその気になってくれたのがすごく嬉しかったとジャスティンはインタビューで話している。  

 ヴィン・ディーゼルのカメオはLAでの最初のスクリーニングをするまで完全に極秘扱いで、ラストにドミニクが登場した時の観客のどよめきではすごかったらしい。

・ヴィン・ディーゼルは何を待っていたのか?

 このくだりでいつも不思議に思うのがヴィン・ディーゼルだ。

 ヴィン・ディーゼルがドミニク・トレットというキャラクターを気に入り、また演じたいと思っていたことは確かだと思うが、果たしてどこまで待つつもりだったのか?

 「xXx」や「Riddick」の様子からなんとなく「鳴くまで待とうホトトギス」スタンスだいうのは感じるのだが、それにしても3作目となるともう後がない。

 ジャスティン・リンが”ドミニクとハンの物語”を話した時、ヴィン・ディーゼルはいけると思ったと思うのだけれど、このタイミングでジャスティンが現れなかったらどうしていたのか。

 ・全ては幸運すぎる偶然だった??

 そう考えると、そもそもなぜ3作目のオファーがジャスティン・リンにいったのだろうかと気になってくる。

 クリス・モーガンが東京を舞台にした話を書いたおかげで、だったらアジア系の監督に撮らせてみようかということになったのか。

 ジャスティンにオファーがあった時、タイリース・ギブソンがジャスティンが監督する映画に出ていたというのもタイミングが良すぎるといえばよすぎる。タイリースのアドバイスがなければ引き受けなかったと思うとジャスティンもインタビューで話している。

 まぁ後から見るから出来すぎのタイミングのように見えるだけで、幸運な偶然が重なっただけのことかもしれない。

 しかし、ここまで書いてきてもう一つ不思議に思えてきたことがあった。

 そもそも「ワイルド・スピード」の1作目はなぜ多様な人種からなるキャスティングに成功したのだろうか?

 LAのストリート・レースをあつかった映画だったおかげというのもあるだろう。

 B級映画だったのでスタジオもさして関心がなく、キャスティングについてうるさくいわれることもなかったのかもしれない。

 だとすればロブ・コーエンが2作目の監督を断った時、ジョン・シングルトンを次の監督につれてこようと思ったのは誰のアイデアなのか。

 ヴィン・ディーゼルが2作目を断った本当の理由はなんだったのだろう?

 ジョン・シングルトン監督に決まった時、ヴィン・ディーゼルが2作目に出演する可能性はまだあったのだろうか? 

 「ワイルド・スピード X2」に1作目から引き続き登場するキャラクターはブライアンとFBIのビルキン捜査官の二人だけだ。舞台をマイアミに移してドミニクとブライアンだけが出てくるような筋書きだったのだろうか。

 2作目のシナリオは最初から1本しか用意されていなかったとポール・ウォーカーがインタビューで話している。

 とすればマイアミに流れ着いたブライアンがビルキン捜査官に逮捕され、麻薬組織への潜入捜査を強要された相棒として助けを求めたのがドミニクだったという流れだったのか、もしくはドミニクが逮捕されて自由を条件に潜入捜査を強要され、相棒として求めたのがブライアンだったという内容だったのか?

 ヴィン・ディーゼルが出演しないことが確定して、ブライアンと組む相手をドムから幼馴染のローマン・ピアースに書き換えたということか。

 それともジョン・シングルトン監督にオファーした時、そうすればでヴィン・ディーゼルが出演を承諾してくれるかもしれないという思惑がスタジオ側にあったのだろうか?

  一つどころかどんどん不思議なことが続出してきた。

 それとも私が勝手に混乱しているだけなのだろうか?

 あれ???

 

 なんだかわけがわからなくなってきたのでまた今度。

 

・ジャスティン・リン監督作品感想

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