誰がマルコム Xを殺したのかを探るため、当時の捜査資料や機密文書、証言を緻密に辿っていくドキュメンタリー。 ネトフリにて視聴。全6話。
マルコム Xが暗殺されたのはアブドゥア-ラーマン・ムハンマドが3歳の時。マルコム Xの思想に傾倒していき、やがて彼の死の真相を知りたいと個人的に調べ始める。
マルコム Xとネーション・オブ・イスラムとの関わりやネーション・オブ・イスラムとはどういう組織だったのかということを説明しつつ、暗殺時に逮捕された3人のうち2名は冤罪だったことを示す証拠や証言が幾つも存在していたにもかかわらず、警察や検察がそのことについて一度も捜査したことがないことに着目し、マルコムの命を奪った散弾銃を撃った実行犯と思われる人物とその人物をとりまく人々がその人物やマルコムの暗殺についてどう思っているかを取材していく。
色々と驚くことだらけだった。
マルコムXは知っているようで全然知らなかったので、マルコムXやなぜ彼がアイコン的存在となっているのかなど、「マルコムX」入門編としてとてもわかりやすいドキュメンタリーだった。
当時の捜査のすちゃらかさにも驚かされたけれど、何よりも1960年代のアメリカの時代感に衝撃をうけた。月面着陸をやっている傍らで公民権の適用を求める運動や人種差別の撤廃運動が行われていたわけで....。
知らなかったわけではないけれど、頭の中で立体的に合致していなかったとでもいえばいいのだろうか。
リンカーンが奴隷解放宣言をしたのが1862年でその100年後もまだまだ「おれら同じ人間やっちゅーねん!」ていうことをわからせるだけのことにとんでもなく凄まじい戦いを強いられていて、で、今なお改善されていない点が多々あるわけで。
まぁ、イギリスなどでは肌の色が同じだろうとも「ジェントルマン」か「ジェントルマン」でないかでこれまた差別を受けていた時代もあるわけだから、なんというかかんというか...。
冤罪の可能性がある人たちについて、ムハンマドさんが集めた資料があれば、ドラマでよく見る裁判のイメージだと合理的疑いで推定無罪を勝ち取るのに十分な気がする。
結局、二人を有罪にする証拠は皆無に近いわけだし。
何もしていないにもかかわらず家族と引き離され、20年間刑務所で過ごさないといけない存在がいることをはっきりと知りながら「もう過去のことなんだから放っておきましょう」でやり過ごそうというのも怖い話で、差別もさることながら宗教やコミュニティに属することにつきまとう怖さもなんとなく。
あとちょっと「クラレンス・アヴァントの奇跡」をもう一度見てみたいような気がしてきた。キング牧師やマルコムXの話も出てきていたので。
...って、今もう一度予告見たらリュダクリスもでているよおな???(←これ見た時はまだ「ワイスピ」知らなかった......んだよ。)
映像でみるホンモノのマルコムXはとてもかっこよくて、言ってることも頷けることも多くて人々の心をつかんだというのはすごくわかる感じだった。ひそかに感じていたこと、言えずにいたことを代弁してくれたという嬉しさ頼もしさ高揚みたいなものもあったんだろうなぁとか。一挙手一投足をずっと目で追っていたくなるようなスマートさ、しなやかさみたいなのもあってそういうのをカリスマ性というのかなぁとか。
でももしもこの人がこのまま大きな流れを作っていっていたとしたらどういうことになっていたんだろうと考えると、なんだかいろいろと複雑だなぁと思ってしまった。もっともなことしか言ってないのに、そう思ってしまうのは悲しいことなのかもしれないけれど、でも、この人の言動をいろいろと利用しようと考えそうな勢力やそれをふまえて警戒する側の存在とか、そういった要素も考えていくとなんだか難しすぎて頭がフリーズしてしまう。
それをつきすすめた果てに最悪の衝突しかみえないのなら、「もうそれしか道がない」と思いつめる前にそれが本当に最善なのかどうなのかちょっと冷静にならないといけないというか。それを推し進めた果てにあるものも具体的に想像しないと悲劇しか待っていない感じで。
なんか、難しいなぁ....と。