So Be It

見た映画やドラマでFilmarksにない作品の感想と覚書。時にネタバレを含んでいますのでご注意ください。

駅馬車 (Stagecoach)

 リンゴ・キッドはそもそも何をしてムショ入りとなったのか。

駅馬車(字幕版)

駅馬車(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

途中からもうそれが気になって気になって。

 

以下、ネタバレしかしていません。

 

・リンゴ・キッド

 脱走兵とかなんだろうかとも思ったけれど、でも17歳から牢獄にはいっているというし。

 お父さんとお兄さんの敵討ちを目的にローズバーグに向かうリンゴ・キッド。

 当初はジェロニモの一派に殺されたのかと思ったら、"3対1"で勝てるはずがないとみんながやたらと心配するので、仇の対象がローズバーグに住む3人組ということはジェロニモとの戦いで命を落としたとかでもないのかと。

 リンゴ・キッドは登場してから、頼り甲斐のあるものすごくいい人で銃の腕もいいと皆から頼られているので、とても逮捕されないといけない理由がある人と思えなかったんだけれど、ラストであんな感じで保安官さんとお医者さんに粋な感じで送り出されていたので、ちょっとやんちゃだけだったのかな??とか。

 ダラスがローズバーグについてリンゴ・キッドが私の正体を知ったら...とひどく心配するから、娼婦ということ以外になにかやんごとなき秘密があるんだろうかと心配したけれど、そういうことでもなかった。

 求婚しつつも決闘もやめないっていかがなものなのさ、キッドさん。

 でもこの場合、ローズバーグから出ることはダラスには大事なことだから、キッドは自分が死んでもダラスには誰にも負い目を感じる必要のない場所で新しい人生をのびのびと歩んで欲しいと思ったのかな。

 そう考えるともう本当にいいヤツだなぁ、リンゴ・キッドさん。

 だから刑務所にお世話になるような人には.... 。

 保安官の様子から、リッチピーポーな人々の横暴から弱者を守るために法を犯してとかなんかそんな理由なんだろうか。

・飲んだくれのお医者さん 

 アルコール飲みすぎのお医者さん、お酒が好きすぎてお酒醸造所の営業マンにめちゃくちゃなつく。どさくさにまぎれて試供品(?)を飲みまくる。

 いざというときのお酒の抜き方が凄まじかった。

 体に吸収される前なら有効かもしれないけれど...飲んだくれでも腕利なお医者さん。このアル中でも優秀というパターンはお酒飲みさんのドリームの現れにすぎないのではという疑惑がいつもついてまわるのだけどまぁいいか。

・ギャンブラーとルーシー

 男前でやたらキザなギャンブラー。

 しかし家柄はいいらしい。

 奇兵隊にいる夫の元に向かうために駅馬車に乗り込むルーシーに一目惚れして一緒についていっちゃう。

 しかし、ルーシー、あなた、身重の体で馬車で長旅なんて、しかも臨月だったっぽい。お医者さんやダラスがいたからよかったけれど..。

 まぁ保安官とリンゴも牛さんや馬さんの出産は体験していそうだからいざとなったらなんとかできたのかな。妊婦さんと思っていなかったので途中の出産イベントにはびっくりした。

 ルーシーは自分が見下していた人たちに助けられるということを通してなんというか今後考え方を改めていくのかもしれないなぁ。将来的には身分に分け隔てなく治療が受けられる診療所とか建てていそうだ。

 男前ギャンブラーのハットフィールドはルーシーの夫の部隊にいたとか言っていたから、前々から好きだったとかなのかな。

 社交界でなんとなく知っていて、ひそかに好きだったけれど別の男と結婚してしまいーという感じでハートブロークン展開したところでの再会だったりしたんだろうか。 

 最後まで想いを知られることなく逝っちまいました。せつないやつめ。

・銀行家

 役に立たないくせに身体でかくて馬車の中で場所とるは、道中文句ばっかりいって煩いは、出産後のルーシーにはなんの気遣いもみせないはともう同乗したくない客ナンバー1な銀行家。

 まぁ、奥さんも相当面倒くさそうな感じの人だったから、きっと入り婿で肩身のせまーい思いしかしていなかったのかもしれないけれど、ほんとうに終始鬱陶しかった。  

   あの馬車の中にこんなに人が入れるのかと軽く驚きつつ。

 ・眠くならなかった!

 1935年に公開された映画だというのにちゃんとテンポがよくてびっくりした。

 カーチェイスというか馬車チェイスシーン、遠景ショットのスピードもすごかったし、スタントも「ええええ???」みたいな。

 「古い映画+動かない=睡魔との壮絶バトル」という方程式は崩れ去りました。

 だって、スタートレックとかー......。

 映画ではないけれどクラッシック版のドクター・フーもなかなかの苦行なのに。

  眠くなる作品というのは古さ新しさには関係ないということなのかな。

 

・ヤキマ・カヌート

 ジェロニモの一派に馬車が襲撃されるシーンのスタント・コーディネートを行ったのがヤキマ・カヌートという人。

 ジョン・ウェインのスタントダブルを務めていた方なのだけれど、”こうすれば殴ってなくても相手が殴ったようにみせることができる”テクニックとかを生み出した人なのだとか。

 すごい。この映画ってもしやスタント・コーディネーターという職種を誕生させた映画ということになるのかしら。

  馬に乗り移ったあと、リンゴ・キッドに撃たれて馬から転落して、そのまま馬車の下側に巻き込まれていってしまうスタントやリンゴ・キッドが御者席から馬に飛び移るスタントとか、撃たれて馬から転げ落ちるスタントやらなんでもこなし、しかもカメラマンがあまりのことにちゃんと撮れてるか自信がないと監督に言ったら、このヤキマさん「必要なら何度でもやりまっせ!」と。

  このジョン・フォード監督というのもスタントマン出身だそうで、危険なスタントをこなしたヤキマさんの身の安全をとても心配していて、カメラマンがちゃんと撮れたかどうか自信がないといっても「絶対に撮り直しなんかしないからな!」ときっぱり。

 こうやってスタントマンさんたちのことを思いやれる監督さんだからこそ、いい信頼関係のもと、最高のアクション・シークエンスが撮れたのかもしれないなぁなんて。

 このヤキマさんとのエピソードでジョン・フォード監督への好感度もググッとあがってしまった。危険なスタントを取り直す必要がないようにカメラマンさんもカメラの配置をすごく工夫したとかで、今も昔も"Team work makes the dream work."というのは変わらないんだなぁと。

  あと面白いなぁと思ったのは、西部劇といえば馬スタント。

 ということで、この頃のスタントマンさんはロデオ出身者が多かったとか。

 つまり、ロデオってすごい身体能力を要する競技なんだなぁと。

 ドライビングテクニックがうまいと一目おかれる感じでロデオがうまいとやっぱり一目おかれた感じだったのかしらなんて思ったり。

 ・オリジナルプリントが紛失しまくったわけ

 ちょっと笑ってしまったというか、なんでも1966年にこの映画をリメイクしようとしたプロデューサーさんたちがこの映画のオリジナルプリントをほっとんど台無しにしてしあったとか。

 1966年当時だとあのヤキマさんのオリジナルスタントの迫力に匹敵するようなものはとてもとても再現できないから使い回しで使おうとして、やらかしたとか。

 唯一無事にのこったフィルムというのがジョン・フォードが自宅金庫で保管していた自分用にとっておいたコピーだったとか。

 うわぁ、監督コピーとっておいてくれてありがとう!! (スタジオ側が安易にリメイクしてお金稼ごうとしてやらかしたとかではないと思いたいところでございます)

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅: 100%

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