マイナス20度で全力疾走してはいけません。
雪深い先住民の保留地で家畜を襲う獣などを駆除するFWSのハンター、コリー・ランバードは、ピューマの足跡を追っている途中で一人の少女の遺体を見つけ通報する。FBIが派遣してきたのは経験の浅い捜査官ジェーン・バナー一人だった。
とても苦い映画だ。
先住民保留地が舞台となっているが、見ている途中で沖縄のこともちょっと思い出した。
ネイティブ・アメリカンがどのように追い詰めらていったという話になるとすぐに「わが魂を聖地に埋めよ―アメリカ・インディアン闘争史」という本を思い出す。あまりにも衝撃だったので、先住民保留地にまつわる問題に触れた映画やドラマを見るたびに、その本を読んだときに感じた息がつまるような恐ろしさを思い出して怖くなってしまうのだ。どこまでもどこまでも追い詰められていく恐ろしさ。地上の片隅で生きることすら許されないようなあの追い詰められ方は本で読んだだけだというのにとても忘れられるものではない。
アフリカン・アメリカンの人たちの歴史も、この人たちの歴史も人間が相手を対等な存在とみなさない時どれほど残酷になれるかという証が刻まれているので、繰り返してはいけないと肝に銘じておくためにもきちんと知っておくべきだろうと思う。
加えて男性による女性への暴力の恐ろしさだ。 これも根っこはおなじところから発していて、相手を対等な存在とみなさないことから何をしてもいいとどこまでも残酷になれる。しかもとても軽い気持ちで。
この映画をみたときに感じたのは先住民保留地にまつわる問題よりも男性がアドレナリンにまかせて暴走したときの残酷さの方が強烈な印象として残ってしまった。ときおり沖縄で起こる事件もこういう経緯でおこるのかもしれないとふと思ってしまい余計にゾッとするものを感じた。
人が本能というか生理的なもので動くときというのは得てして”理性”は飛んでいるものだ。"冷静に考えれば..."というプロセスが吹っ飛ぶ。だから過剰に凶暴化する...のではないかと思ってしまう。暴力描写やヘイトスピーチが怖いというのは、冷静になれない状況下で人が反射で動いてしまうとき、日頃から無意識のうちに意識に刷り込まれてしまっているこれらのことが本能が向かう方向を決めてしまう可能性が高いからではないかと思うからだ。ものごとを”ステロタイプ”にあてはめることもおなじリスクを孕んでいるのではないかと思う。
映画からだいぶ話がそれた。でもまぁ、こういった問題について日頃はむしろあまり考えたくない、意識を向けたくないというような私のような人間にも、こういったことに考えを巡らさせたのだから、それだけでも見た価値はあったのだと思う。
あと雪山で全力疾走したら怖いということも学んだ。マイナス20度(?)の中を全力疾走すると肺が破裂して窒息死しちゃうそうですよ。命の危険を感じてもマイナス20度の中でうかうかと走ってはいけません。(おなじ雪山で命を落とすならまだ「眠い。眠っちゃだめだ...」の方がマシな気が←?)
この映画では被害者の女性は主人公であるコナーの娘の友達で、コナーもこの事件よりも前に愛娘を失っている。映画の最後には保留地で多くの女性が行方不明のままとなっているとの文字が出てくる。過酷な環境下では無事に成人して犯罪に巻き込まれることなく人生を送ることの難易度も当然高くなる。
この映画をみた翌日ぐらいに「ワイルドライフ」で野生のオラウータンが子供を無事に育てて独り立ちさせられる確率が96%と知り、人間ももっとがんばろうぜとちょと思わずにいられなかった。
- My family's people were forced here. Stuck here for a century. That's snow and silence...... is the only thing that hasn't been taken from them.
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️/5
🍅: 87%