なんというか苦い映画だった。
20歳年下のCEOデュークの下で働くリックは上司であるデュークにはへつらってばかりだがそれ以外の相手はあからさまに見下す嫌な男だった。しかし、デュークがイヴに目をつけたことを知ったデュークは殺しを請け負う会社を経営しているかつての大学の同級生にデューク殺害を依頼する。
オペラのRigolettoを企業に置き換えたということで、まぁ、とても容赦も救いもない。リックは同情の余地がないほど嫌な奴だが、さりとて彼にも彼なりの人間性がある。
パパ「昔はもっといい人間だったんだ」
娘「いまだってそうだよ、パパ」
こんな健気な娘が自分が頼んだ殺し屋に標的と間違えて殺されてしまうっていう。
それもリックがちゃんと標的であるデュークの正確な位置情報と容姿をきちんと伝えていなかったからだ。黄色いジャンパーとサンタクロースの帽子なんてあの状況下、彼女でなくてもありえたコンビネーションだ。プロの殺し屋もその曖昧な情報だけでよく実行したな。まぁ、そこはオペラを下敷きにしているから。
20歳年下だろうがなんだろうがデュークがビジネスマンとして、人間としてきちんとしていたならこのような悲劇は起こらなかったもしれないが、「なんでこんなぼんくらにおれは頭を下げなくてはいけないんだ」という思いがますますリックを嫌な奴にしていき、自分の鬱憤を他人を徹底的に見下し侮辱することではらす。
娘さんのイブさんは本当に気の毒すぎた。 めちゃくちゃいい子だったのだ。デュークだってこの事態を知れば悲しいだろう。まぁ、自分が本当は殺されそうだったとしれば、イブのことなど彼の頭の中から消し飛んでしまうかもしれないが。デュークの人間性を深く描く気はない映画なのでそこはもうディグってもしょうがない。
リックに人間性があるなら、デュークにももちろんあるだろう。あの若さで大企業のCEOの座につき、ぼんくらだったとしても悩みがないはずもない。実力もないのにそういう家に生まれたからということで責任の重いポジションにつかされたというのもまぁ気の毒な話といえば話だ。結婚も親の決めた結婚だったんだろうか。まぁ、誰にだって悩みや悲しい事情はある。
2004年の映画でNYが舞台。ウォール街の高いビル群を見上げるショットが、閉塞感をよけいに煽る感じ。オフィスの中はますます外界とは切り離されたような、別世界に彷徨い込んだ感覚。日常や常識とも大きくかけ離れてしまっていることに気がつけない密閉空間。そんな感覚がちょっとSFっぽい感じもした。
Rickを演じていたのはビル・プルマン。「The Sinner」のあの渋い刑事さんだったとは全然気がつかなかった。
ぼんくらデュークをアーロン・スタンフォードが演じていたわけだが、イブが出て行ったあと、こんな繊細な顔をさせたらデュークも表と裏の顔を持っているんだなってなってしまう。とはいえ、綺麗なショットだったのでカットしないでいてくれてありがとう。(←俳優目的視聴で見方が歪みまくっているパターン)
私の好み度: ⭐️⭐️/5
🍅: 46%