思いのほか爽やかな(?)話だった。
マジック・マイクの痛快サクセス・ストーリかと予測していたが、どっこい、マイクが我にかえる話だった。
ストリップダンサーとしてのマイクのクオリティは高い。常に新ネタも用意してるし、動きもキレキレ。そもそもこのストリップクラブの経営者ダラスのエンタメにかける気合いがすごい。ダンサー達に求めるレベルも高いし、ストリップダンサーとしての自信と誇りを持たせるための煽りもすごい。ショーに挑む姿勢はもはやアスリートのようだった。
マイクは将来はオーダーメイドの家具店を開業する資金を稼ぐために、ストリップクラブの他にも仕事を掛け持ちしている。屋根葺き仕事で19歳のアダムと知り合い、彼をストリップクラブにスカウトする。そのアダムの姉ブルックに恋をすることで、マイクは自分の立ち位置を客観的に見直す機会を得たようだ。
マイクは開業資金をコツコツとため、1万3000ドルまで稼いだが、アダムの尻拭いのために1万ドルを失うことになる。興味深いことに当のアダムに夢である家具店のことをバカにされたにも関わらず怒らない。いくらアダムの姉に恋をしているからといって、本気で追いかけていた夢をあのように言われて冷静でいられるものなのだろうか。しかもアダムのせいで1万ドルを失った後でだ。
映画はマイクがストリップクラブを辞め、ブルックに生き方を改めることを約束し、終わる。ようやくカタギに目覚めたようで、めでたいことだとは思うのだが、一方でマイクは別にストリップショーをプライドを持ってやっていたわけでもないのかと、なんだかがっかりもする。
逆にダラスはストリップショーにプライドを持っている。彼にはこれにかける揺るぎないプライドと信念を持っている。マイクはダラスの成功は自分のおかげだと思っていたが、その誇りと自信を持たせたのは間違いなくダラスだろう。
アダムを教育したようにマイクを教育し、プロ意識の高いダンサーに育て上げた。おそらくはダラスもかつて1ダンサーだったのだろう。そこからのし上がった。ストリップのエンタメ性を心から愛し、誇りを持ち、常にレベルの高いショーを提供する。ダラスは自分が理想とするストリップクラブを築き上げ、着実にステップアップしていった。タンパシティ店の最後の日、いつもは前説担当のダラスが渾身のダンスを披露する。マイクが家具店を目指していたにせよ、この業界で一旗あげるつもりだったにせよ、ダラスからすればマイクのその覚悟のレベルはまだアダムの域を出ていなかったのだろう。
そこで見えてくるのがアダムとマイクとダラスの立ち位置だ。アダムはかつてのマイクでありダラスだったのかもしれない。そしてマイクはかつてのダラスであり、マイクは今後どの業界で身を立てるつもりであるにせよ、ダラスへとステップアップしていくのだろう。ブルックへの恋がマイクをアダムの領域から脱し、ダラスへの道を踏み出させた。
つまりこれはマイクのGrowing-upストーリーだったわけだ。たぶん。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️/5
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