悲惨だったり凄惨だったり悲劇だったりもするけれど、パワフルにしたたかに駆け抜けていく。画面から溢れでるエネルギーに圧倒されながら、シャダールのひたむきさにぐいぐいと引き込まれていった。
過酷な現実を燃え盛る生命力で泳ぎぬく。少しでも気を許せばあっというまに命を落とす。現実は何1つ彼らに優しくない。長い物に巻かれるか、自らも非情になるか生き延びるための手段など選んでいられない。悩む間すら与えてくれない。
そんな世界でシャダールは愚直に初恋の夢を追い続ける。これこそが運命だからとあきらめない。世界で1番手に入れたいものはシャダールにとって彼女の笑顔だけ。シャダールはとんでもないロマンティストだ。過酷な現実をものともせず、このラブストーリーをひたすら信じ続ける。
シャダールよりはるかに現実主義者の兄サリームは弟のロマンティストぶりに呆れながらも、唯一の家族である弟の手を離すことなく、過酷な現実が弟をさらっていくことを決して許さない。汚れもなにもかも引き受けて、サリームは弟を通してひそかに夢を追い続ける。そんな奇跡が起こるはずないと思いながら、最後の最後までサリームは兄として弟を庇護し続ける。命を引き変えにすることも厭わずに。弟を守り続けたことでサリームもまた過酷な現実に打ち勝ったのだと思う。
シャダールやラティカと共に。彼らは三銃士なのだから。One for all, all for one. この絆が彼らを奇跡の勝利に導いた。見終わった時、生きる力、生き抜く勇気を彼らから少し分けてもらった気がした。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅:91%