マーガレット・サッチャーの半生を描いた映画だが、切り口が興味深かった。
8年前に癌で先立った夫のリアルな幻と日常生活を続けているマーガレット。ことあるごとに会話し、過去を振り返ったりしている。そのため、周囲から認知症ではないかと心配されている。当人もある程度自覚があり、夫の幻を見ないようずっと手付かずにいた遺品整理にとりかかろうとするが、なかなかふんぎりをつけることができない。
サッチャーが政界に入り、首相に当選辞任するまでの1975年〜1990年、経済不振、IRAによるテロ、フォークランド紛争などとんでもなく大変な時代をイギリスはくぐり抜けて今に至ったのだなと、おどろいた。
イギリスにはエリザベス女王がいるので女性が要職につくのも他国よりは困難ではないのではないかとなんとなく思い込んでいたが、とんでもなかった。バリバリの男世界で政治の舵取りをするのはさぞかし強靭な精神力が必要とされただろうなと、"鉄の女"と異名をとるぐらいでなければ、到底男性議員達を動かすことなどできなかっただろう。
しかしこの映画の中のマーガレット・サッチャーは時折"鉄の女"の片鱗をのぞかせたりするものの、子供は独立、夫には先立たれ、老いによりだんだん自分がかつての自分ではなくなっていく不安に押しつぶされそうな、孤独の中で生きる普通の女性としても描かれている。
サッチャーの夫のことは全く知らなかったが、理解力があり、あの時代に本気で彼女をサポートできたというのはすごい人だと感心した。
ご主人に先立たれた悲しみからなかなか立ち直れないサッチャー。旦那さんを思う気持ちにはせつなくさせられたが、やはり彼女は"鉄の女"なのだと思わせてくれるエンディングはなかなかステキだったと思う。
イギリスのことをもっと勉強したくなった。
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅: 51%