So Be It

ネタバレを含んでいますのでご注意ください

レディ・プレイヤー1 (Ready Player One)

想像していた感じとは全然違って、とても楽しめた。

レディ・プレイヤー1(字幕版)
 

 

 

 すんなりと物語の中に入り込める導入。テーマパークのゲートをくぐったようなワクワク感。そこここから湧き出てくる見覚えのあるキャラ、メカ、建物、風景、シーン。私でも初見でわかるネタがわんさか転がりまくっているのだから見る人が見たら、もうおもちゃ箱をひっくり返したようなものなのではなかろうか。

 どこかノスタルジックであたたかい。子供の頃、時間を忘れて何かに没入していた時のワクワク感。

 それは豊かな自然の中で走り回って培ったものでも、又は、街中の空き地や広場で日が暮れるまで泥んこになって友達と遊んで培ったものでもない。劇場や部屋の中で、画面と向き合って培われた記憶。

 未知の世界に踏み込んでいくワクワクする気持ち。一人で謎を解いたり、仲間と知恵を出し合ったり。仲間がいなければ、作品の作者と作品を通して対話し、理解を深めていく。秘められた意図に気がついた時の達成感、至福感。いいステージまでいったのにセーブし忘れた絶望感。何十時間にもよる積み重ねが、強さが足りなかったり、たったひとつのうっかりのせいでゼロになってしまう悔しさ、やるせなさ。多岐にわたる感情の琴線を揺さぶられ、脳みそをフル回転させて、自分なりに戦った戦歴。その気持ちをシェアできる仲間に巡り会えた時の喜び。

 そういったことに身の覚えがある人は懐かしさのビッグ・ウェーブにほぼ確実に飲み込まれるにちがいない。

 またいたるとことに仕掛けてあるのだ。

 「これってあれだっけ...」とか思っているその0コンマな時間の間に目線をよぎっていった見覚えのある何かにまた別の記憶を刺激される。

 うっかりするとメインストーリーを追いそこねてしまいそうなものだが、主人公とその仲間たちの冒険談は極めてシンプルなので、冒頭からノスタルジーに浸れまくる猛者たる”オタク”がその程度のことで迷子になる心配はない。このシーンはあとで見返そうとか、自分が気づいたイースター・エッグをあとでwikiで照らし合わせてみようとか、そんな算段も頭のどこかで同時にやってのけている。

 益体のないものに夢中になれる。利害など関係ない。自分の好奇心を満たすためならどんな苦労も試練も厭わない。世間からはまったく理解も評価もされなくても、同じ穴のムジナの仲間たちからはリスペクトされる。同じ世界観を共有できる。そこに到達した者だけが共有できるもの。そこにまだ到達できない者からは羨望の目を向けられるだろうし、目標にされたり妬まれたりすることもあるだろう。そういった感覚をうまい具合にこの映画は現していたと思う。

 バーチャルな世界で摘んできた経験と記憶。それは決して無ではなく、確実な何かであり、世界を変える大きなパワーになり得る。
 もちろんこの映画ではバーチャルな空間が現実逃避の手段であることも否定しない。金を毟り取られていく怖さもあることもきちんと示唆している。オンライン上では皆仮面をかぶっている。危険もたくさん潜んでいる。だからといって本当の友情や絆を築けないわけでもない。対人関係の難しさやリスクについてはオンラインも現実世界もかわらない。どちらも十分な注意を払う必要があるし、人生の宝物となりうる絆を得ることもできることもある。

 ポップカルチャーの中で育ったクリエーターたちが、さらなるポップカルチャーを生み出し、またそこで育ったクリエーターたちがポップカルチャーを息吹かせる。ポップカルチャーの影響力をあなどってはいけない。世界を変えるような発明や発見をした人たちの一番最初の原点はあんがいポップカルチャーだったりすることが多いのだ。

 最初に、"想像した感じとは全然違って”と書いたが、実はもっと寒々とした世界観やストーリー展開だろうと見る前は思っていたのだ。このままバーチャル・カルチャーが進むことへの警鐘みたいな感じかなんだろうなぁという感じ。

 ところが、この映画では、バーチャルで自分の中に経験として培ったものが決して無ではないこと。大切なものを見失わずにいることの大切さ。そもそもなぜ映画やゲームが好きなのか。映画やゲームのどういうところにワクワクしたのか。そんなことも思い出させてくれる。

 人はどこかで繋がりたいと思っているし、誰かに理解してもらいたいと思っているし、理想を求めている。そういった想いをいっぱい込めて作った作品群を養分として未来は生まれる。

 ゲームの中で諦めなかったのなら現実でだって戦える。問題は山積みでも諦めなければ思いがけないところから抜け道や解決法が見つけられるかもしれない。一人でやる必要はない。みんなで知恵を出し合ったらいい。狭いアパートの一室だろうが、廃車の中だろうが人の想像力はルールや固定観念にとらわれたり、自らリミッターをかけない限り無限のパワーを秘めている。

 ”難しく考えることはない。君たちは大丈夫だよ。今度は君たちが君たちの物語を自由に語る番だ”

 と次世代にエールを送っているような感じでもあり、次世代の信頼からくる心地よい楽観を感じられた。そこがすごくこの映画で気に入ったところだ。

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅:72%

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