バーデンダーさんとバーのお客がボトル1本かけて面白話で勝負する話。
ではない。
けれど、これはそういう趣向の映画なのかなとうっかり途中で信じかけた。
そのくらいバーで語り合うシーンが長い。しかし、我々はすでにバーテンダーさんの正体が時空警察であると冒頭で知らされている。したがって、バーテンダーとバーのお客のちょっとしたいいお話...で済むはずはないとわかっている。わかっていながらも、その確信がゆらいでくる。これだけで済むはずがない。す、済まない...よね?
結論からいえば、面白かった。すごく私好みだった。
しかし、残念なことに出会ったタイミングがあまり良くなかった。
私は最近ドラマ版の12モンキーズを見終わったばかり。ハマりにハマって、サントラも現在もネトフリとフールーで見られるにもかかわらず久しく買ったことなんかなかった円盤まで買い揃えてしまうぐらいハマった。
何が言いたいかというと、ドラマ版の12モンキーズはこの仕掛けを駆使しまくったドラマだ。
ドラマを見ながら何度「このドラマ、リバー・ソング展開すぎて死ぬ」と悶絶したことか。
ドクター・フー(Doctor Who)を見ている人なら"リバー・ソング展開”と言えばすぐにピンときてくれるだろう。そうまさにあんな感じなの!
10thドクター、11thドクター、12thドクターにいたるまでの、リバーーとドクターとの間で起こるさまざまなドラマ。まさにあれ。あれで泣いた人なら、たぶんドラマ版12モンキーズでも悶絶できるのではないかと思う。
ドクター・フーを見たことがない。またはタイトルはなんとなく聞いたことがあるけど、見たことはない。見たことはあるがリバー・ソングは知らないという方のために軽く説明しておこうかと思ったけれど、説明した途端にいろんなことのスポイラーになりそうだからやっぱりやめておく。
で、話を戻そう。
本題は映画のプレデスティネーション。
映画の途中でドラマ版の12モンキーズを彷彿とさせるくだりが何度も出てきて、どっちが先に世に出た作品なんだろうとどうしても気になった。
というのも、12モンキーズを見ていて何度も上記のように"リバー・ソング展開すぎるー”と思ったようにプレデスティネーションを見ていて、これはもしや"ジェームズ・コール展開?”と思ったからだ。(ちなみに、思って、なんだよそっくりじゃねーかよーと思ったのではなく、大好物なのでそれってそういう話なのかと期待で嬉しくなってドキドキしたのだ)
ここで言う”ジェームズ・コール展開”のジェームズ・コールはあくまでもドラマ版のアーロン・スタンフォードが演じた”カワウソの瞳”を持つおバカな可愛さ炸裂のジェームズ・コールの方であって、映画版のダイ・ハードなブルース・ウィリス版ジェームズ・コールではない......、こともないのか。(ややこしい)
エンディング・ロールで原作があるとわかったので、それを見てようやく腑に落ちた。原作はロバート・A・ハインラインの短編「All You Zombies」で1958年に書かれたもの。そりゃいろんな作品に影響を及ぼしているわな(読んだことないけど)。

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( ドラマ版12モンキーズもきっと随分ここから着想をもらったんだろうなぁ。いつか読もう)
つまり、もしもドラマ版12モンキーズを見る前にこの映画を見ていれば間違いなく、壮大な世界観に鳥肌たてていただろうし、切なさに泣いていたんじゃないかと思う。この手の話は大好きなのでそこは疑いない。しかし、このタイミングだったので、それ以前にであっていれば、もしくはもう少しドラマのほとぼりが冷めてから見ていれば、もっと素直に感動できただろうになぁとちょっと残念。
時空警察という単語に、映画を見る前は時空警察が時を超えて犯人を追いかけるアクションものかなと思っていたのでバーのシーンの長さに面食らったのだが、この映画はそういうタイプの映画ではない。まずは腰を据えて、それこそ画面に映るバーのカウンターに自分も座っている気にでもなって二人の話にじっくり耳を傾けるのがいい。きっと極上の"物語”が味わえる。
私の好み度:⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅:84%