So Be It

見た映画やドラマでFilmarksにない作品の感想と覚書。時にネタバレを含んでいますのでご注意ください。

Mrs Ratcliffes Revolution

 イアン・グレンとキャサリン・テイト主演のコメディ。

 

 あらすじ

1968年、フランクは念願だった英語教師の職を東ドイツで得ることができ、一家と共に東ドイツに移りすむ。妻ドロシーの父親はコミュニストの運動家で英雄でありフランクは彼にとても憧れていた。アーティストを志す奔放な長女から不満の声はあがったものの一家はフランクについていく。イギリスのパスポートを捨て、共産党員の一員として暮らしていくことになる一家だが、思い描いていた理想とは程遠い現実に直面し、次第に家族の絆もほころび出していく。

感想

コメディ映画だがなかなかシュールだ。じわじわと統制の中に組み込まれていくことの怖さも描かれている。理由もなく周辺の人たちが突然逮捕されたり、笑顔でいながらお互いを監視していたり。
それらがまっやく深刻にならず軽快なタッチですすんでいくのは妻ドロシーの巻き込まれ型主婦視点でドラマが展開していくからだろう。ドロシーは専業主婦で自分は何の役にも立てない価値のない人間だと思い込んでいて、そのせいで子供たちやフランクにも関心をもってもらえないと悩んでいる。
思い悩んで自殺しようとしている若者と出会ったドロシーは、自殺するよりずっとマシといった具合に、あまりコトの重大さを考慮しないまま若者の西側への亡命を手伝う。それがきっかけで亡命したい人たちから頼られるようになり、重圧に耐えきれなくなったドロシーは家族揃っての西側への脱出を計画する。

たまに喧嘩しても仲良し家族だったはずが、いつの間にか家の中で話すことや、家族間で話し合うことにも警戒しなくてはならくなっていく。場面場面はとても滑稽なのだが、その滑稽が滑稽として成立せず、その些細な滑稽が命取りになりかねない危険をはらんでいるという状況が不気味で、面白くて笑っている間もどうにも落ち着かない怖さを感じた。
フランク一家は脱出するが、彼らと共に東ドイツにきていたひきこもりで見知らぬひととしゃべることもできなかったドロシーの弟がそこで真実の愛を見つけ、一家とはいかずにとどまることを選ぶ。

流儀が違うだけでそこに暮らす人たちはモンスターではない。ここがどうと正すべき点を指さすことができないあいまいで慌ただしい日常の中で、その目には見えない不気味さに気がつけるかどうかもわからない。気づいたとしても間違っているのは自分の方かもしれないとなかなか声をあげらない。その時、大事なのは自分にとって一番大切なもの見失わずにいられるかどうか、ありがちだがとても難しい。そんなことをいろいろ考えさせられる映画でもあった。

イアン・グレンとキャサリン・テイトの笑いとシリアスの緩急のつけかたが絶妙なので、ややこしいこと考えることなく単純にこの夫婦のドタバタを楽しむこともできる。この二人、とにかくいちいち可愛らしいのだ。


Mrs Ratcliffe's Revolution - Trailer

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅:80%

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