CIAの“Honored Colleague Award”を文民ではじめて受賞したチャールズ・ウイルソン氏というテキサスの実在の政治家の伝記を元に作られたお話。
驚くことはたくさんあった。最低表向きだけでもクリーンでいなければいけないイメージの強かったアメリカの議員さんの中に、こんな、それこそ映画の中に出てきそうな粋な遊び人キャラの人が実在したとは。
遊び人というだけではなく、頭の回転が素早く機転がきき、とにかく有能。人からの信頼も厚く、交遊幅が広く、倫理観も高い、有言実行の人。この人たちの周りに集まってくるひとたちもものすごくできる人たちで、正しいことをするために最大限の効果を上げることのできる手段をはじき出し、着実に実行し、効果を上げていく。この過程を見るのは確かに小気味好く、爽快だ。
一方で、これだけの凄腕の人達が叡智を結集し、国や文化、宗教の違いを乗り越え協力し、最大の効果をあげたとしても、それが後々さらなる災いを引き起こす因縁になっていくのだから、なんと業の深いことかと震撼としてしまう。
東西の代理戦争が引き起こした混乱がさらなる災いを呼ぶ。そもそも大国が介入するのが悪い、というような単純な話だということでもまるでないということが、この映画を見てだんだんと見えてきて、問題の複雑さ、難しさに改めて愕然となる。
あの難民キャンプを目にして、正義感に突き動かされずにいるのはほぼ不可能といっていいほど難しい。なすすべもなく爆撃され子供まで無惨に殺されていく。どう考えても爆撃する側に正義も正当性もありはしない。
あの段階で難民キャンプや圧倒的に不利な武力でも自分の住処を守るために戦い続けている人々がいる。侵攻は止まらない。止めるには、これ以上死者を出さないためには武力で対抗するしかない。戦闘地区にいる人たちの命を救うのは時間との戦いだ。時間がかかればかかるほど死者が増えていく。
これを目の当たりにしたとき、どう解決するか、チャーリーのとった手段以外、ほかに何があるだろう。あるはずだ。どこかにあるはずだが、誰の目にも見えない、もしくは実現できないのであれば、なぜそれが実現できなのだろうか、そこを突き詰めて考え続けなければ、このカオスからは永遠に抜け出せないのではないだろうかと絶望的な気分になってくる。
この映画を観ていて、ペリー元米国国防長官が言っていた言葉を思い出した。
“私たちは戦争は誰かが起こそうとして起きるのだと思いがちだが、二大超大国が全力で戦争を避けるために使えるありとあらゆる手段を講じていたにも関わらず、危うい寸前のところまでいっていた”。
映画より
ーThere's a little boy and on his 14th birthday he gets a horse... and everybody in the village says, "how wonderful. The boy got a horse" And the Zen master says, "we'll see." Two years later, the boy falls off the horse, breaks his leg, and everyone in the village says, "How terrible." And the Zen master says, "We'll see." Then, a war breaks out and all the young men have to go off and fight... except the boy can't cause his legs all messed up. and everybody in the village says, "How wonderful." <br />ーNow the Zen master says, "We'll see.
ーCharlie Wilson: These things happened. They were glorious and they changed the world... and then we fucked up the endgame.
私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5
🍅: 82%